コロナ関連のニュースで、連日テレビで顔を見ない日がない人といえば、安倍晋三総理、小池百合子都知事、そして大阪府の吉村洋文知事。頻繁に流れる会見映像で、新型コロナ感染拡大をなんとしても食い止めたいと訴えかけるコメントや、対策の遅い国への不平不満で「モノを言える知事」を印象づけ、その甘いマスクも相まって人気急上昇。とくに女性たちからは「理想の上司」なんて言われてるとか。SNS上では「国政に行ってください」「応援してます」といった声援に加えて、「吉村寝ろ」と心配する声がトレンド入りしたり、とにかく今回のコロナで知名度を上げた筆頭かも。
じゃあ、誰もが吉村府知事を大応援!かといえば、地元の大阪では意外にも「そうでもない」という声が少なくない。
「いい意味でも悪い意味でも言葉を濁さないハッキリした物言いは、さすが維新の会所属の政治家だと言われています。でも、緊急事態宣言下の都府県で連日叫ばれているのはサラリーマンのテレワークや商業施設の休業要請。とくに後者の休業要請については、吉村知事の言い分に疑問を唱える人が地元大阪で少なくないようです。というのも、会見で吉村知事の口癖として有名になったのが『休業と自粛はセット』というひと言。まさにその通りと誰もがうなずくわけですが、その言葉のあとは常にトーンダウン。続いて出てくるのが『大阪府の財政は東京都とは格段に違う(少ない)』『(大阪府はできないので)国に要請している』というもの。つまり、補償のあてはないが自粛は絶対にしてほしいという姿勢なんです。それが商人の街、大阪で反感を買っている理由でもあります」(関西在住ライター)
ワイドショーなどの街取材でも、大阪では「補償してくれるなら休みますけど、補償はないけど休めだけじゃ無理でしょ」「コロナに感染したらそれまでですわ」「お客さん来なくてもいいから開けます。少しでも売り上げがあったほうが助かりますんで」と、渋々でも休業を受け入れる東京のお店とは少々温度差が違う。
「さらによくなかったのは、14日、大阪府は休業要請に応じない場合は個別の要請や指導、施設名を公表することも検討していると発表したこと。これでネット上には『名前晒すんだ?』『コロナで死ぬ前に餓死しろってこと?』『個別の指導ってめっさ怖いわ』『魔女狩りみたい』『これが、知事が持ち上げられてる大阪の正体よ』という言葉が書き込まれ、吉村知事に“ナニワの金正恩”と最凶ニックネームをつける人もいました。確かに大阪の財政は東京に比べて厳しそうです。でも、万博も開催予定なことから『そんなん後回しでええやろ』という声がいたる所で聞かれますし、万博費用ぐらいでは人々をまとめて救うことができないことは府民もわかっていますから、それを踏まえて『だったら政治家を食わすためだけに税金払うなんてまっぴらや!』と吠える人も。また、そういった反感意見に賛同する人が多いんです」(前出・関西在住ライター)
つまり、メディアがあおる吉村知事人気は、大阪ではまったく実体が伴っていないということ?
「いえ、人気はありますよ。でも補償は国任せなのに、要請を強制と履き違えているような言葉や政治的手法が、SNS上の言葉を借りれば『イキってるだけやん』と徐々になってきているようです。テレビを見て好感を抱いているのは、直接関わりのない東京都民だけかもしれませんね」(前出・関西在住ライター)
テレビの世界と現実の社会とでは、かなりのギャップがあるようだ。
(西村しほ)