ところが、そんなエビデンスに逆らうように、巷では薄毛・ハゲ対策が蔓延している。
「例えば昔から言われる、ワカメや昆布などの海藻類を食べると髪が黒くなるといった話。これはまったくのデタラメと言っていい。ワカメを含めAGAと食べ物は関係ないし、頭皮マッサージも、血行が悪くなると髪が抜けてしまうと思われがちですが、頭皮には毛細血管が密に張り巡らされているため血行は良好で、血行不良になりにくい場所。しかもAGAのメカニズムからすれば、効果は期待できません」
となると、血行を促す効能をうたったシャンプーや洗髪方法も直接関係はないということになるが‥‥。
「特に影響しないと考えていいでしょう。頭皮はしっかり洗うべきですが、あんまりゴシゴシこすりすぎたり熱すぎる湯を使ったりすると、炎症を招きます。同様にドライヤーも刺激を避けるため少し離して風を当てたほうがいいでしょう」
頭皮がアブラっぽいと薄毛になるというイメージがあるが、皮脂の詰まりとAGAとの間に因果関係がないことも研究データで明らかになっているという。
「だから、よく『毛穴をクレンジングして‥‥』といった宣伝で法外なお金をとる商法を目にしますが、あれは完全にインチキ。毛穴に詰まった皮脂をきれいにしても、薄毛は改善されないし、またすぐに詰まってしまうため、意味がないということです」
それが事実だとしたら、今まで言い伝えられてきた薄毛改善策は、ほぼ「エセ科学」ということになる。現段階でAGAに効果があるのは、付け薬と飲み薬、植毛のみ。そういう意味では、今回の毛包組織を培養した再生医療技術は、薄毛で悩む人々にとって画期的なニュースと言えそうだ。
「よく、薄毛治療で何百万円も使った、という話を聞きますが、コンプレックスを利用して金をむしり取るなんて、とんでもない話。男性の外見コンプレックスのほとんどは毛包の仕業です。まずはそれを理解し、エビデンスがない予防や治療には絶対に引っ掛からないことです!」
4500億円とも言われる日本のヘアケア市場。ダマされないためにも、正しい毛包の知識を身につけるしかない。