1Lあたり全国平均より約20円も安いという「コストコのガソリン」が、地域経済を揺るがしている。地元の小規模スタンドが閉店に追い込まれる「コストコ・エフェクト」が深刻化しているのだ。
山梨県南アルプス市では、「コストコ南アルプス倉庫店」の開業後、地元JAが運営するガソリンスタンド3軒が3月末に撤退を余儀なくされている。福岡県小郡市でも同様に、周辺の地域スタンドの売上の約1割が減少し、経営を圧迫している。
ただ、消費者の見方は厳しい。《従来のスタンドは値段を据え置き、あぐらをかいているのではないか》という意見も少なくないのである。確かに「いつまでも高いまま」の価格設定に不満が募るのも無理はないかもしれない。
なぜコストコはこれほどまでに安くガソリンを提供できるのか。最大のポイントは「会員制ビジネスモデル」と「大量仕入れ」にある。コストコは会員からの年会費を利益の柱とし、ガソリンは赤字覚悟の「誘引商品」として位置づけている。また、商社を通じて大量に調達することで原価を抑え、ガソリン自体の利益を最小限にしても、全体で十分な利益を確保しようという仕組みだ。
これに対し、一般的なガソリンスタンドは仕入れ価格に「輸送費」「人件費」「設備維持費」等を上乗せせざるを得ない。その結果、2023年度の営業利益率は約1~1.5%にとどまり、約4割が赤字決算に苦しんでいる。加えて人口減少やハイブリッド・電気自動車の普及によって需要が縮小し、直近10年でスタンド数は約2割も減少した。
では、こうした従来型スタンドが生き残るには何が必要か。自動車ライターが言う。
「ガソリンの提供だけでなく、洗車、整備、車検サービスの充実、高齢者向けプログラムの拡充、EV急速充電器の設置など、多角的な収益モデルの構築が求められます。さらに、全国石油商業組合連合会(全石連)は、『防災拠点としての給油所網』の重要性を数値で示し、行政に補助金や税制優遇を要請すべきだとしています。地域防災の確保と、経済的な自立の両立が要となるでしょう」
コストコの低価格は確かに魅力だが、「価格以上の役割」を果たす地域スタンドの存在価値を再評価することが、持続可能なガソリン販売のカギとなるのかもしれない。
(ケン高田)