致死率は新型コロナウイルスの10倍もという、恐怖の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)への警戒感がアメリカで急速に高まっている。医療関係者が懸念する。
「米疾病対策センター(CDC)が1月6日、ルイジアナ州でH5N1に感染し入院していた患者が死亡したと発表したんです」
世界保健機関(WHO)によれば、鳥インフルエンザのヒトへの感染は03年1月から24年5月までに、世界23カ国、891例が報告されており、うち463例が死亡している。死亡率は52%に達する。
「新型コロナの致死率は、最悪だった20年で約8%です。それでも世界がパニックに陥った。それと比較しても50%というのは恐るべき数値。しかし、これまで騒ぎにならなかったのは、死亡例がアフリカやアジアの一部に偏り、欧米で深刻な重症化例がなかったため。それが今回、突然アメリカ南部のルイジアナの患者に死亡者が出て一気に緊張が高まったのです」(同)
そのため、アメリカで最も多く感染が広がっているカリフォルニア州では非常事態を宣言したほどだ。今後、どう対策すればよいのか。先の医療関係者が明かす。
「ルイジアナの患者は、裏庭で鳥を飼育しており死亡した鳥との濃厚接触が感染原因と見られている。ところがその後の検査で、ヒトの喉にウイルスが付着しやすくなる変異が見つかったという。ただし、ヒトからヒトへの感染は確認されていないため、爆発的拡大のリスクは今のところ低いと考えられています」
しかし、懸念はある。厚労省関係者が指摘する。
「アメリカでは昨年春から酪農農場の乳牛にH5N1鳥インフル感染が広がり、乳牛からヒトへの感染が数多く確認されているが、動物からヒトへの感染が頻繁に起こると、ウイルスはヒトからヒトへ感染する能力を得ようと変異する。ヒトの体内で免疫の攻撃を受けても、遺伝子構造を変えながら生き残る特徴があるからだ。この変異によりヒト-ヒト感染が起こるようになれば、パンデミック(世界的大流行)の可能性は一気に高まる」
日本では、まだ人間への感染の報告はない。しかし、昨年末から年明けにかけ、茨城県八千代町、愛知県常滑市、岩手県盛岡市の養鶏場で高病原性の鳥インフルエンザが相次いで確認され、大量の鶏が殺処分された。日本でいつ鳥インフルエンザ感染患者が出てもおかしくない。
万が一、鳥インフルエンザによるパンデミックが起きれば世界で30億人が感染し、最悪の場合は6000万人が死亡するという恐ろしい予測もある。日本でも最悪の事態に備え、改めて真剣な対応、対策が求められる。
(田村建光)