「通天閣が身売りされる」と、各メディアが一斉に伝えている。
「コロナ禍以後、大阪はインバウンド需要が絶好調です。さらに、来年4月には大阪・関西万博が開幕し、跡地の夢洲では統合型リゾート(IR)の開業がほぼ確定しています。そのため、よりインバウンドに大阪をアピールするには、シンボルタワーである『通天閣』のテコ入れが必須と考える関係者が多いのです。結果、大資本との資本・業務提携が模索されていたといいます」(経済ジャーナリスト)
実は、現在の通天閣は2代目だ。初代は1903年に行われたミニ万博のような「内国勧業博覧会」の後に、その象徴的存在として1912年に建設された。だが、1943年の火災で大破。その後は戦時下の鉄不足で解体されたままだった。
地元の有志らによってようやく再建の起工が行われたのは1955年だった。とはいえ、資金は彼らの持ち寄りだったため、予定した3500万円の資本金が2500万円ほどしか集まらず、中には高利貸しから借金して出資した人もいたという。以来、通天閣観光という会社が運営主体となっていた。
「身売り」については、株式の売却や業務提携等の交渉が南海電鉄などと行われており、買収金額は「数十億円程度」にのぼるという報道もある。
「南海電鉄は、10月には鉄道会社を分社化して、不動産事業など鉄道以外の分野でも稼げる企業にしようと会社機構を変えようとしています。その一環として、通天閣にほど近い難波~新今宮駅間の沿線開発『グレーターなんば』構想を掲げ、不動産開発に注力しているのです。こうしたタイミングの中、通天閣をグループの傘下に収めることが検討されたのではないでしょうか」(前出・ジャーナリスト)
失礼ながら、イマイチあか抜けないところが通天閣の魅力でもあった。仮に身売りが成就した場合、どんな「新・通天閣」が現れるのか、大阪人は楽しみにしているに違いない。
(猫間滋)