企業など組織に属さず、フリーランスとして働く人を保護することを目的とした「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(フリーランス新法)が11月1日、施行された。フリーランスが不当な扱いを受けないよう、業務を委託する企業に義務を課す法律だが、いったいどんな内容なのか。
要約すると、企業がフリーランスに仕事を委託する場合、業務内容、報酬額、支払期日などの取引条件を口約束ではなく、書面かメール、SNSのメッセージなどで送ることが義務化。報酬については、企業が発注した物品等を受け取った日から原則60日以内に支払わなければいけない。また、企業が1カ月以上の業務委託をした場合、報酬の減額や買いたたき、不当なやり直しなどが禁止される。
ネット上では《なかなかの量の仕事で散々ラリーしてから「これ全部1万円でお願い」と言われた》《足元見られて激安案件を時間の余裕なく頼まれた》《激安報酬の入金が3〜4カ月後だった》などとフリーランスが過去の悲惨な体験をアップする一方、《これでフリーランスをしっかり守れるかというと微妙》《法律ができたところで、結局、仕事欲しさに相手の要求をのむしかない》などと疑問を持つ声も少なくなかった。
一般的に立場が弱く、収入も不安定なフリーランスにとって報酬の支払いの保証などが義務化されたのは大きい。それに加えて、心強い制度が11月1日から始まった。
「あまり大きく報道されていませんが、フリーランスでも労災保険に特別加入できるようになりました。仕事中や通勤中のケガや病気、死亡に対して補償を受けられます。ケガや病気の場合は労災保険指定医療機関において、無料で治療を受けられます。療養のために仕事を休み、収入を得ていない場合も給付を受けることが可能です。死亡した場合は、遺族が年金または一時金の給付を受けることができます。厚生労働省によると、保険料は給付基礎日額(労働者が労災保険制度によって支給される給付の計算基準となる1日あたりの平均賃金)が1万円の場合、年額1万950円です」(マネー誌ライター)
労災保険の特別加入も、フリーランスにはありがたい制度だ。
(石田英明)