談合、過大なノルマ、騙し営業…生保と損保「闇の舞台裏」に迫る/江上剛が選ぶ「今週のイチ推し本」

 保険金を不正請求したビッグモーターほど酷い事件はない。生保業界も酷い。高齢の生保レディが契約者を騙し、多額の損失を与えた。本書は「損保の闇」「生保の裏」に迫る迫真のドキュメントである。

 損保ジャパン社長の白川氏は、ビッグモーターの不正が疑われていたにもかかわらず取引再開を決断した。

 他の損保の幹部たちも同じだった。彼らはビッグモーターの取引を失うことを怖れ、不正を続けていた。この会社は、彼らの恐怖を巧みに利用し、翻弄したのである。

 この原因は、損保業界が談合体質になれきっていたからだ。彼らは企業保険の分野でも談合していた。そのため金融庁によって厳しく弾劾された。損保業界は談合することで、企業や代理店となれあい、不正を続け、堕落していったのだ。

 その結果、多くの契約者が不利益を被ってきた。その責任をいかに果たすのか。商売は正しくなければ長続きしない。これは永遠の原則である。再度、肝に銘じるべきだ。

「生保の裏」は成績優秀で、ある銀行トップと異常なほど親しい、高齢の生保レディが契約者を騙す過程が描かれている。生保幹部たちは彼女の言いなりにならなければ、業績が悪化するばかりでなく、銀行トップの逆鱗に触れ、自らの出世さえ覚束なくなるとの「恐怖」に捕われてしまったのだ。

 彼らの姿は、大物総会屋の言いなりになり、不正な融資を継続し、東京地検の強制捜査を招いた第一勧業銀行(現みずほ銀行)の幹部たちを思い出させた。

 この事件以上に最悪と言えるのは、生保各社が生保レディたちに過大なノルマを課していることだ。彼女たちは高齢者の不安を煽り、高リスクの商品を売りつける。その実態は胸糞が悪くなるほどだ。

 ほかにも、税法の間隙を縫う「節税保険」や「外貨建て保険」の回転売買など「顧客のためになっていない」ことばかり行っている。バブル時代に、銀行と一体になり、相続対策と銘打って高額の変額保険を販売し、多くの人を破綻に追い込んだ歴史を忘れてしまったと言うのだろうか。

 生命保険協会のホームページを見ると、生命保険とは人々の「生活を請け負う」と書いてある。現状は、その言葉とは裏腹に、破綻に追い込む可能性がある高リスク商品の押し売り稼業である。こんなことをしていたら、消費者からそっぽを向かれる日も近いだろう。

 私は、多くの人が本書を手に取り、損保・生保業界の甘言に乗せられず、対等に交渉ができるようになればいいと考える。そして損保・生保業界の人たちは、本書を自戒の書として読み、利他の精神に立ち返り、正しいビジネスを実践して欲しいと切に願う。

《「損保の闇 生保の裏 ドキュメント保険業界」柴田秀並・著/990円(朝日新書)》

江上剛(えがみ・ごう)54年、兵庫県生まれ。早稲田大学卒。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)を経て02年に「非情銀行」でデビュー。10年、日本振興銀行の経営破綻に際して代表執行役社長として混乱の収拾にあたる。「翼、ふたたび」など著書多数。

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