これまで開催された世界各国の万博では、各パビリオンのスタッフが寝泊まりする宿舎は会場近くに確保されていた。しかし、土地に余裕のない大阪・関西万博では困難な見通しだ。
「2025年日本国際博覧会協会」は、世界中からやって来る海外パビリオンのスタッフ向けに、大阪各地の公営住宅やホテルなど、約2300人分の宿舎を確保している。だが、そのほとんどは「通勤」に1時間程度かかり、途中駅での乗り換えも必要。さらに、会場までの交通機関は「大阪メトロ・中央線」のほぼ一択となる。
大阪は東京に次いで朝の通勤ラッシュがひどい地域だ。満員電車が不慣れな外国人にとっては大きな負担となることは容易に想像がつく。しかも、万博期間中は中央線の乗客が激増し、一部ではピーク時のお盆や年末の帰省ラッシュ並みの乗車率140%に達するとの予測もある。そのため、参加各国の関係者から不安の声が上がっているという。
「昨年、国土交通省が発表した『鉄道混雑率調査』によると、22年度の関西圏で朝もっとも混雑する区間は阪急・神戸本線の神崎川~十三間の134%。つまり、来年度は大阪メトロ・中央線が関西圏でいちばん混む路線になる可能性があるということです」(関西の鉄道事情に詳しい大手紙記者)
混雑以外にも問題がる。故障や事故で大幅な遅延、または運休が発生した場合、パビリオンのスタッフの到着が会場の営業開始時間に間に合わなくなる可能性がある。
「会場のある人工島の夢洲には、大阪各地などからシャトルバスも運行されますが、道路は南北に1本ずつあるだけ。しかも、大阪中心部を通って向かうため、朝の渋滞に巻き込まれるのは必至。最悪、営業が始まってもパビリオンは閉館したまま、などという事態も起こり得るでしょう」(前出・記者)
開催の遅延も叫ばれて久しい大阪万博だが、また1つ大きな問題が浮上してしまったようだ。
*画像は万博会場と大阪中心部を結ぶ、大阪メトロ・中央線。