奈良県が交通渋滞の緩和にと、総工費約45億円の巨費を投じて今年4月に新設した「奈良公園バスターミナル」の“ガラガラ状態”に批判が殺到している。
県は5月、6月のバスターミナル利用見込みを1万9285台と予想していたが、実際には7020台だったことが判明。荒井正吾知事は「私にとっては想定外」などと肩を落としている。
「ここまで『奈良公園バスターミナル』が利用されない原因は、その不便さにあります。バスターミナルで客を降ろしたあと、ターミナル内にバスを停めておくことはできず、車で10分もしくは30分離れた駐車場に移動しなければならない。場合によっては、乗客を降ろしてから30分かけて駐車場にまで移動し、5〜10分の駐車のために3000円を支払って、また30分かけてターミナルへ乗客を迎えに行かなければならない…などというケースもあるようです」(社会部記者)
この状況に奈良県民からは《バス事業者の聞き取り調査をまともにしていないのでは?》《完全に税金の無駄遣い》《こんな結果になることは鹿でも分かる》などと、厳しい意見が相次いでいる。
「多くの観光バスはどこに消えてしまったかというと、奈良公園のほど近くにある春日大社の駐車場です。春日大社の駐車場は3000円の利用料を支払えば乗客を降ろしたあとでも待機していられるため、わざわざ奈良公園バスターミナルで客を降ろす必要も、遠くの駐車場に行って待機する必要もない。春日大社によれば、今年6月のバス駐車場は1.5倍も利用料が増えたとのことです」(同)
荒井知事は春日大社の駐車場を「思わぬ伏兵」と形容していたが、その読みの浅さに県民からはさらなる批判が殺到しているという。これから紅葉シーズンを迎えるだけに、ますます注目が集まると同時に、厳しい声が噴出しそうだ。
(小林洋三)