アメリカ大統領選挙を巡る2人の懐事情が明暗を分けている。バイデン陣営が調達した選挙資金は2月だけで5300万ドルを超え、トータルでは1億5500万ドル(約235億円)に達した。対するトランプ陣営は総額で7440万ドル(約113億円)と大差をつけられ、加えて訴訟関連費用で5300万ドルが消え‥‥と、本来は強みであった資金力でだいぶ苦戦を強いられている。
「2月には、資産価値を水増しして不正な利益を上げていたとされたニューヨーク州地裁の訴訟で4億5400万ドルの支払いを命じられ、トランプタワーを差し押さえられかねないところまで追い詰められていました。ところが3月末に、控訴手続きで必要な保証金が半額以下の1億7500万ドルに減額され、差し押さえの危機を回避することができたのです」(全国紙記者)
これと同時期、金銭面で別の朗報ももたらされている。
「トランプのSNS『トゥルース・ソーシャル』を運営する『トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ』が、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて米ナスダック市場に上場すると、時価総額で80億ドル(約1兆2000億円)となる高値をつけたのです。トランプはこの株式を60%保有していますから、とたんに50億ドル規模の資産を持つことになりました。ところが週明けの4月1日には多額の損失が明らかになったことから一気に下げ、前週の上昇分がパーに。もともと事業の中身に比べて過大評価されていたからで、トランプの思惑通りには事が運びませんでした」(同)
複数の裁判と大統領選挙を同時に戦う資金面の苦境は今後も悩みの種になりそうだが、ここに来てトランプはある秘策に打って出た。
「3月31日の復活祭を前に、自身のSNSで聖書の販売を行ったのです。表紙に星条旗がほどこされ『God Bless the USA』(米国に神の祝福を)と印刷された“愛国者聖書”で、日本円で約9000円というシロモノ。ですが、トランプの集会で流される『God Bless the USA』を歌うカントリー歌手とのコラボ商品ということで、一部キリスト教信者からは信仰を利用して金稼ぎをしているとして批判も上がりました」(同)
トランプはこれまでも、MAGAハット、マグカップ、最近は金のスニーカーと、いずれも数量限定で販売しては、即日完売となった。ただ、この聖書の売り上げは、大統領選挙には使われないという規約で販売されている。訴訟費用には持ち出されるのかもしれないが、決定打とはなるまい。
さて、次はどんなディールで選挙の“実弾”を賄おうというのか。
(猫間滋)