「100年に一度の再開発」で渋谷が”若者の街”から”大人の街”に変わる!

 渋谷ヒカリエ(2012年)の開業から始まり、渋谷キャスト(17年)、渋谷ストリーム(18年)、渋谷ブリッジ(ストリームと同日の9月13日)と、相次いで複合商業ビルがオープンした「渋谷駅周辺再開発」プロジェクト。今後も、渋谷スクランブルスクエア、南平台プロジェクト、渋谷駅桜丘口地区の開発が進み、その大規模な再開発は「100年に1度」と言われ、開発規模だけでなく、渋谷の街がどう変わっていくのかが大きな注目を集めている。

 そして9月11日、プロジェクトの1つで、今年の12月5日に開業する予定の「渋谷フクラス」の概要が明らかにされた。
 
「コンセプトは、『大人を楽しめる渋谷へ』。もちろん渋谷は『若者の街』として知られています。そんな渋谷で『大人“も”楽しめる街』でなく、『大人“を”楽しめる街』としたところがフクラスのミソかもしれませんね」(タウン誌ライター)

 というのも、地下4階〜地上18階建てのうち、2〜8、17、18階の商業施設に入るテナントのキーワードは「MELLOW(成熟した)LIFE」で、メインターゲットは40〜60代の大人の世代というからだ。
 
 フクラスが建つことになるのは渋谷西口駅前で、そこは2015年3月に閉館した「東急プラザ渋谷」の跡地。そしてフクラスの店舗は東急プラザ渋谷が再出店することになるので、それ自体がかつての渋谷を楽しんだ世代にとっては懐かしい記憶が新たな装いをまといながら蘇る場所になるのかもしれない。
 
 出店予定のテナントも“大人向け”だ。例えば、3階の雑貨・ファッションフロアには、1792(寛政4)年創業の打刃物問屋の「日本橋木屋」や京都伝統の絞り染めを使った和雑貨を扱う「片山文三郎商店」が渋谷エリアに初出店するなど本格派だ。また、屋上広場に面する17、18階部分に入居予定なのが、シンガポール・香港・フランスのサントロペ等で店舗展開をするエンターテインメントレストランの「セラヴィ」で、あのシンガポールのマリーナベイ・サンズの最上階レストランと言った方がその雰囲気は伝わるかもしれない。こちらは日本初上陸だ。

 ところで、「渋谷=若者の街」が出来上がったのは、団塊ジュニアが大人になりかける80年代、若者文化が流行って以後の話だ。

「戦後の渋谷の歴史を紐解くと、そもそもは青山学院・国学院大学が立ち並ぶ文教地区で、文化施設としても、東急文化会館は屋上にプラネタリウムがあって、渋谷パンテオン、東急名画座、東急レックスと、多数の映画館を併設していました。また、渋谷公会堂もあるなど、文化の香り高い伝統があるんですね。東京オリンピックで主会場となった明治神宮外苑周辺を中心に東急グループが開発を行った際にも、大人がくつろげる街づくりがなされていたといいます」(同前)

 今度の大開発では、原宿、表参道、青山、代官山、恵比寿などへの回遊性も高めるという。確かに、渋谷駅周辺はちょっとでも駅前の雑踏を離れれば、松濤を中心とした閑静な高級住宅街が広がる土地で、「安倍晋三首相や麻生太郎財務大臣、楽天の三木谷浩史社長といった政財界の大物や有名芸能人が多数住居を構えています」(同前)と言うように、大人が住まう土地だ。

 
 となればそこには、「人生100年時代」に向けた、次世代の新たな街づくりの構想が窺えるのだ。

(猫間滋)

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