世界各地で政治や社会を風刺した作品を数多く発表しているバンクシー。英国を拠点にしていることは明らかだが、年齢や性別、出身地といった個人情報はすべて不詳という謎に包まれた覆面アーティストだ。
その作品は街中の壁などに突如として無断で描かれるほか、美術館や博物館にも無許可で陳列されたケースもある。その手法から「芸術テロリスト」とも称されるが、実は、日本国内にもバンクシーとみられる作品が複数残されている。ただ、一方では、バンクシーと同じタッチで描かれた「バンクシー風落書き」が各地で急増し、大きな問題となっている。
中でも数多くのバンクシー風落書きがあるのは、茨城県北部の高萩市高浜町の防波堤だ。現在、少なくとも9点の作品が描かれており、ちょっとした観光名所になっている。だが、現地には「落書き禁止」「落書きは犯罪です」と書かれた立て看板や貼り紙があり、決して容認されているわけではない。防波堤を管理する高萩市もメディアの取材に対し、「落書き行為は犯罪で、観光としてのPRはできない」とコメントしている。
もっとも、市内に住む50代会社員は「落書きというレベルのクオリティじゃない。観光資源としてぜひ保存すべき」と語気を荒らげ、30代の主婦も「よくあるスプレーアートには拒否反応を示す人も多いが、ここにあるのは芸術性の高い作品。子供も絵を見て喜んでいるし、消さないでほしい」など、地元住民の多くは好意的だ。
「厄介なのはバンクシーの作品か否かを確認できないことです。19年に港区内の防潮扉にバンクシー風の落書きが発見された際は小池百合子都知事が喜び、都庁で展示しています。ですが、ネット上では描いた本人と直接話をしたという人物の投稿もあり、本家バンクシーの作品ではない可能性もあると言われています」(アート専門誌編集者)
ちなみに、高萩市以外でもバンクシー風落書きはその多くが現在も残されている。本物か贋作かの論争は尽きないのだが、果たして…。