宮沢の前に出版した樋口可南子の写真集「water fruit」(朝日出版社)は、日本の「ヘア解禁」作品と言われる。その他にも、高岡早紀や葉月里緒菜など名だたる女優たちを目の前で脱がせてきた。
加納氏が語る。
「彼は坊主の家の生まれだからか、弁舌が達者だった。モデルとの関係を築く時も当意即妙で、口がうまかった。会って話してみれば、伝え聞いた通りだとすぐにわかる」
篠山氏は山口百恵の代名詞「時代と寝た女」というフレーズを考案したことでも知られる。
「当時、とある撮影現場にいたスタッフの話です。隅にカーテンを引いて、その中で篠山さんと百恵さんの2人だけで撮影をしていた。『もっとグイっと! 挑んで!』という篠山さんの声が聞こえて中をのぞいてみると、山口さんの上半身は一糸纏わぬ姿になっていたそうです。もちろん、ヌード撮影の予定はなかった。篠山さんに絶対的な信頼を寄せていたのでしょう」(芸能記者)
晩年になっても、篠山氏の写真に懸ける情熱は衰え知らずだった。18年にファッション誌「UOMO」で、田中みな実の巨胸がこぼれ落ちそうなグラビアを撮影している。
「この撮影でも篠山節は全開だったといいます。田中が身につけていたブラの肩ひもを『1つ下げてみようか』と指示したかと思えば『じゃあ両方とも』と、流れるように2つとも外させてしまった。さらにはニップレスを付けていたのですが、テンションの上がってきた篠山さんは『邪魔だから取っちゃおう』と。田中はもちろん抵抗しましたが、巨匠の〝言葉ヂカラ〟に負けるように結局、みずから外したそうです」(芸能記者)
09年には屋外でモデルのヌード撮影を行い、公然わいせつ罪に問われたこともあった。撮影現場は常にハプニングの連続だったのである。出版関係者が秘話を明かす。
「海辺でモデルさんの撮影をしている時だったといいます。突然、強風が吹いて、篠山さんの頭上から〝飾り物〟が飛ばされ、砂浜をグルグルと駆け回ったそうです。その瞬間、御本人を含め、スタッフ一同の時が止まってしまった。ただ1人、アシスタントが必死に追いかけ回して、何とか捕獲して頭の上に戻したそうです。すると、何事もなかったかのように時が再び動き出したと。実際に見たと豪語する関係者から聞きましたが、まあ眉唾の面もあるでしょうが(笑)」
虚実ない交ぜに、鬼神のごときエピソードが飛び交う巨匠だった。愛すべき伝説の写真家に合掌。