今では、人気ユーチューブチャンネル「令和の虎」にも出演するほか、ラジオ番組でもパーソナリティを務めるなど、メディアでの露出にも積極的な谷本氏だが、そのきっかけとなったのが、ネット通販会社のZOZOを立ち上げた前澤友作氏だったという。
「僕がSNSの影響力のすごさを思い知らされたのが、ツイッターでした。2019年の年始に前澤さんが100人に100万円を配るという『お年玉企画』をつぶやいたところ、フォロワーが激増するどころか、社会問題になるほどの炎上騒動となりました。たまたま僕の弟が当選することになった時に、周囲でもこの話題で持ちきりになりました。そこで僕は考えました。この企画にめちゃくちゃ便乗しようと。そこで顔出しでツイッターのアカウントを開設。その後、紆余曲折がありつつも、ある程度SNSの活用がエースタイルのマーケティングに有効だったと証明できました。ただ、どんな会社でも積極的に経営者が顔出しすることは勧めていません。SNS運用は大いにメリットがあることは認めますが、デメリットも無視できません。その最たるものがDMなどでの嫌がらせや中傷の書き込みです。僕自身、メンタルが強い方だと思っていましたが、それでもエゲツない悪口には落ち込むことがありますよ(苦笑)。ですから必ずしも経営者でなくても、今の時代は若者のデジタルリテラシーは高いですから、若手社員に任せてしまうのがこれからのスタンダードになるんじゃないでしょうか。僕も次なる『広報マン』を育成しようと考えています」
さらに、企業経営者にとっても悩ましいのが、昨今の物価高だ。9月にはWTI原油先物が1バレル90ドルを突破。100ドル突破も時間の問題といわれるほか、日用品や食料品などの値上げラッシュも家計を圧迫。中小企業にとっては人材確保と並んで由々しき事態となっている。
「コストの問題は介護ビジネスを始める時にぶち当たった大きな問題でした。とりわけおむつ代は必要経費の中でも大きなウエイトを占めていて、僕らはその調達に苦心しました。そこで結果的に大手のおむつメーカーに掛け合って一括して仕入れることにしたんです。購入のロットを増やすことでおむつの単価を下げることに成功。加えて持ち前の機動力も駆使して、他の介護事業者とも共同でおむつを仕入れることでさらなる値引きが可能となった。一事が万事、このようなコストカットの施策は削るべきところを徹底して合理化すれば、利幅が少ないとされる介護業界でも十分儲けることができる。僕らが『介護業界の総合商社』を標榜しているのも、このドミナント経営が、今後のインフレ社会でも安定した経営につながるものと考えています」
谷本吉紹(たにもと・よしつぐ)株式会社エースタイルホールディングス代表取締役。人材派遣、管財不動産専門会社を経て、2001年(平成13年)から介護ビジネスに進出。07年に株式会社エースタイルを法人化。現在は従業員350名(2021年4月度実績)、運営施設数は30カ所以上を誇る。22年からはユーチューブにも進出し「令和の虎」の虎役で出演するほか、自身のチャンネル「谷本家」を運営するなど実業家だけにとどまらないマルチな才能を発揮している。