金正恩、まさかの「食糧支援」辞退 「熱烈出迎え」帰国も国民に渦巻く絶望の声【2023年9月BEST】

 23年9月に公開したAsageiBizの記事の中でもとりわけ多くの関心を集めたのが、金正恩総書記とプーチン大統領の電撃会談のニュースだった。将軍様が特別列車を仕立て、8泊9日を費やして持ち帰った“土産”は意外にも……。(以下は9月21日配信記事を再録)

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 ロシア訪問を終え、19日夜平壌に戻った北朝鮮の金正恩総書記。朝鮮中央通信によれば、駅では高官や市民などが万歳をして「熱烈に」出迎えたと伝えられる。

 今回、両首脳の会談は2019年にウラジオストクで行われた初会談以降2度目だが、単独会談、会議、宴会と合わせて面会時間が5時間にも及んだことから、かなり中身の濃い話が交わされたことが窺い知れる。

「今回、正恩氏に随行したのが、ミサイルと核開発を主導してきた李炳哲党中央軍事委員会副委員長をはじめ、砲弾に精通する朴正天党軍政指導部部長、7月の朝鮮戦争戦勝70周年式典に出席するため訪朝したロシアのショイグ国防相と会談をおこなった強純男国防相ほか、海軍トップの金明植海軍司令官や、空軍トップの金光赫空軍司令官といった、現在の北朝鮮の軍事中枢を担う面子ばかり。このメンバーだけ見ても、今回の首脳会談における軍事協力と技術支援に対する意気込みに並々ならぬものがあることが分かります」(北朝鮮ウォッチャー)

 おそらく、プーチン氏はそんな正恩氏を喜ばせる意味合いもあって、わざわざウラジオストクから約1000kmも離れたアムール州のボストチヌイ宇宙基地で、首脳会談に臨んだのだろう。正恩氏は会談後にも積極的に軍事施設を視察するなど、滞在中はまさに軍事一色の外遊となった。

 とはいえ、北朝鮮はいま食糧難により餓死者が例年の3倍に達し、自殺者も昨年より4割ほど増加したともいわれ、麦やジャガイモ、トウモロコシなどの食糧価格高騰により、略奪が相次ぎ犯罪が激化。昨年同期に比べ凶悪犯罪が3倍に増加していると伝えられている。

 つまり、北朝鮮国民の最大の関心は、この食料難をいかにして解決してくれるのかであり、軍事支援など二の次、三の次の話。しかし、今回の会談で一番期待されていた「食糧支援」に関する言及がなかったことに国民は失望している、と米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は伝えている。

「それどころか、平壌駐在のアレクサンドル・マツェゴラ大使の談話を紹介した17日付のロシア『タス通信』によると、金総書記の訪露に際し“お土産”としてロシアから食糧支援を申し出たところ、なんと北朝鮮側がそれを望まなかったと言うんです。ロシアは2020年に北朝鮮に5万トンの小麦を人道的支援として無償提供したそうですが、今回も同様に『支援の準備ができている』と伝えると、北朝鮮側からの回答は『今は問題ない』だったとか。大使の説明によれば、北朝鮮としては食糧よりエネルギーや電力不足を解消するため水力発電への協力をロシアに求めてきたとのこと。これが本当であれば、北朝鮮上層部は餓死者まで出ているこの危機をいったいどう捉えているのか…。おそらく国民の多くが、今回の正恩氏のロシア訪問に大いに期待したはず。口には出せないものの、失望に打ちのめされたことは間違いないでしょうね」(同)

 体面を取り繕うために食糧支援を断り、さらなる軍事支援を取り付け、ご満悦で帰国した独裁者は、失望の先にある絶望、それが犯罪を生み出すこの現実をどう見ているのだろうか。

(灯倫太郎)

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