今や猫も杓子もが「エコ」「SDGs」「再エネ」を声高に叫ぶ時代、その庇護の下、小池百合子都知事が旗振り役を務める太陽光発電が急速に注目を集めている。しかし、その実態は陽光も届かぬ漆黒の闇が潜んでいた──。自然エネ礼賛派から懐疑派まで、初歩からわかる「太陽光ビジネスのトリセツ」を気鋭のジャーナリストが3週連続で開陳する!
再生可能エネルギー、太陽光発電と聞いて、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるだろうか。世界最先端の技術、地球に優しいSDGs、原子力発電のような危険がないクリーンエネルギー‥‥。
もし私が太陽光発電は環境保護には役に立たないし、電気代が高騰する一因だし、土砂崩れは急増し、怪しげなブローカーのような連中が濡れ手で粟で大儲け、得をするのは隣の専制国家、中国だけだ──などマイナス面を列挙すれば「何をたわけたことを言っているんだ」と思われるだろうか?
東京都の小池百合子知事(71)の鶴の一声で、ある制度が始まる。「太陽光パネル設置義務化」と言われているものだ。
これは2025年4月以降に建築される延床面積約2000平方メートル未満の新築建物に太陽光パネルの設置が義務化されるというものである。つまり、「面積が小さい」「北向きで日陰」などの悪条件を除き、すべての新築住宅の屋根の上に太陽光パネルが取り付けられることになるのだ。
東京都はモデルケースとして設置費用が98万円かかった場合、自己負担58万円、都が40万円を補助するとしている。58万円も余計にかかるのか、とギョッとされる方も多いかもしれないが、都の試算によれば、電気代の削減や売電収入などでわずか6年程度で回収可能であり、その上、向こう30年間で最大159万円のメリットが得られるとしている。
実際、屋根置き太陽光発電の利点は、近隣住民とのトラブルが起きにくい点がある。今後10年間で、日本の新築住宅や屋根改修に際して、100%太陽発電設備を搭載すれば、約6000万キロワットの導入が期待されるという試算もされている。6000万キロワットというと、これまに野山に並べられた太陽発電所と同程度ということになる。東京都だからその4分の1程度と仮定したとしても、
さらに言えば、ハウスメーカーの設置工事から生じる雇用の拡大もある程度、期待できることになる。
野山におびただしい太陽光パネルを並べ、
ここまで利点ばかりを列挙してきたが、諸手を挙げて、東京都の制度に賛意を表明するわけにもいかない。というのも、エコやSDGsという名の下、絶対正義とばかりに推進される太陽光発電は数多くの矛盾点、陽の当たらぬ深い闇を内包しているからだ。
三枝玄太郎(ジャーナリスト)1991(平成3)年、産経新聞社入社。社会部などで警視庁担当、国税庁担当、東北総局次長などを歴任。 2019(令和元)年退社。以後はフリーライター。主な著書に「19歳の無念 須藤正和さんリンチ殺人事件」(角川書店)、「SDGsの不都合な真実」(共著/宝島社)など。文化人放送局で水曜日レギュラー、「Xファイル 未解決事件」に出演。YouTube「三枝玄太郎チャンネル」を配信中。