中国は執拗に報道して…アメリカとタイでパンダが「連続急死」のイヤ〜な顛末

 4月19日、タイのチェンマイ動物園のメスのパンダ「リンフイ」が急死した。死因は不明だが、前日の午前中から様子がおかしく、エサを食べた後に鼻血を出していたことが確認されていた。

 中国外交部によれば、両国を映像でつないで、共同で治療に当たったものの、回復することなく死亡したという。正確な死因は中国側の専門チームとタイのチームが共同で調査に当たることになっている。

「世界の動物園で飼育されているパンダは、全て中国から貸し出されたものです。リンフイは2003年にオスのチュアンチュアンとともに中国から貸し出され、09年には子どもの繁殖にも成功しています。10年後に返還予定だったものが10年延期されて、今年10月に返還される予定でした。一般的にジャイアントパンダの寿命は野生で15年ほどですが、動物園で飼育された場合、25〜35年ほど生きるものもいるそうです。リンフイの場合、21歳なので長生きでもなく早死にでもないといったところでしょうか」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 実は、パンダの突然死は今年2月1日にアメリカでもあった。死んだのはオスのパンダ「リーリー」。ただ、24歳だったこともあり平均的な寿命と言えなくもない。だが、単なる急死では済まなかった。ちょうど折悪く2月に返還される予定だったということもあるが、それ以上に2月1日は、例の「偵察気球」がアメリカに現れたタイミングだったからだ。

「気球の問題は、予定されていたアメリカのブリンケン国務長官の訪中を延期させることになり、4日にアメリカ軍機が撃墜したことで米中関係をこじらせました。すると、5日に中国政府系機関紙の『環境時報』が再びこのリーリーの死を取り上げたのです。もともとリーリーは、かなり痩せ衰えた写真がSNSで出回っていて『虐待疑惑』が持ち上がったこともあったので、この報道は中国サイドの完全な当てこすりだと見られています」(全国紙記者)

 パンダのニュースが時に政治的な思惑によって利用されることもあるというのである。

「チェンマイ動物園では、先にチュアンチュアンが19年に19歳で亡くなっていて、この時も中国メディアが、リンフイがエサで固い竹を与えられているために歯が劣化している、と報じた。中国版Twitter『ウェイボー』には、《かわいそう》《育てられないなら貸与を受けないで》といった声が上がりましたね」(前出・ジャーナリスト)

 コロナ禍が落ち着き、観光が解禁された中国では、パンダの故郷・四川がパンダ観光ブームで沸いているという。

 政治的思惑が交錯する「パンダ外交」ではなく、純粋に愛らしいパンダを愛でていたいものだが…。

(猫間滋)

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