あの時、岸田総理は「ウルトラセブン」を口ずさんだ(2)「7」の数字で頭がいっぱい

 もっとも、常に剣呑な雰囲気を醸し出しているわけではなかったようだ。根が明るいのか、それとも単に軽いだけのか、気分が上向くと、びっくりするような挙に出ることもあった。

「SFドラマの主題歌を鼻歌まじりに歌っていたのには驚いた」

 と別の総理周辺者が明かした。SFドラマとは、かつて一世を風靡した特撮モノ「ウルトラセブン」だという。60年代、子供たちが、よく口ずさんだものだ。

 ♪セブンセブンセブンはるかな星が郷里だ

 と始まる歌である。1番の歌詞は「ウルトラアイでスパーク!」と締め括られるが、なぜか岸田総理の中では「ウルトラマンは7!」となっているそうで、7という数字で頭がいっぱいだったようだ。何を差し置いてもG7サミット重視ということなのだろうが、それにしても、増税、少子化対策‥‥と問題山積みの国会論戦など馬耳東風で、ウルトラセブンの主題歌になぞらえてサミットのことばかり考えているとは、その能天気さに呆れるほかない。が、怪我の功名というのか、この能天気なこだわりが功を奏したわけである。冒頭に記したとおり、ウクライナ入りが実現したのだ。

 政府関係者は電撃訪問の裏側をこう語る。

「今回は秋葉氏をはじめ、外務省が懸命に動いた。ウクライナに対してはもちろんのこと、ロシアに加えて米国にも働きかけた。まずウクライナだが、日本に恩を売っておきたいゼレンスキー大統領を動かし、隣接する友好国のポーランドと連携して、訪問に際しての安全保障体制を整えさせた。だが、これだけでは安心できないため、ロシアに対して、水面下でウクライナ入りすることを通知した。こうしたことは、実は米国をはじめ各国がやってきたことであり、日本も、それを踏襲して保安措置を講じたわけだ。とはいえ、これで万全とは言えない。そこで、受け入れ態勢の信頼度やロシアの通知後の様子などを含めて米国に確認する形で、支援を求め、最終的には承諾を得た。つまり、米国および米国が盟主たるNATOがバックアップするとの確約だ。米国は、ロシアの反応についても大丈夫だと太鼓判を押した」

 この政府関係者によれば、岸田総理は「死んでも行く」と口にしていたようで、それを受け、国家安全保障局や外務省が奔走したというのが舞台裏の真相だとも語っている。

 一連の外交が奏功したのか、報道各社が調査した内閣支持率が軒並みアップしている。怪我の功名ではなく、一念岩をも通すというべきか─。

時任兼作(ジャーナリスト)

*週刊アサヒ芸能4月13日号掲載

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