中華の鉄人・陳建一さん死去「料理の鉄人」最終回を振り返り「正直、こんちくしょう」

 料理対決をテーマとしたバラエティ番組「料理の鉄人」(フジテレビ系)で知られる四川飯店グループ会長の陳建一さんが3月11日、都内の病院で間質性肺炎のため亡くなった。67歳だった。

 陳さんは日本に四川料理を広めた陳建民氏の長男。大学卒業後、料理の世界に入り、1990年に父の後を継いで赤坂四川飯店社長に就任した。93年にスタートした「料理の鉄人」では、〝中華の鉄人〟として出演。和の鉄人・道場六三郎さん、フレンチの鉄人・坂井宏行さんらとともに活躍した。

 数ある名勝負の中でも、印象深いのは99年4月24日に放送された最終回。「最強鉄人決定戦」で、坂井氏と激闘を繰り広げたオマール海老対決だ。両者、創意工夫に富んだ料理を作ったが、結果は3対2の僅差で坂井氏の勝利。しかし、オマール海老といえばフレンチの高級食材。2012年7月配信の「アサ芸プラス」で、坂井氏との決戦を振り返った陳さんは、テーマがオマール海老と聞いた瞬間、「正直、こんちくしょう!」と思ったと素直に語っていた。敗れはしたものの、この戦いで「21世紀のエビチリグラタン」というチーズ風味と豆板醤の辛味を融合させた、独創性あふれる料理を完成させて、審査員をうならせた。勝敗が決まった瞬間、坂井氏は涙し、それを見た陳さんももらい泣きした。

 また、陳さんは「料理の鉄人」で挑戦者に負けた最初の鉄人。女性料理人に連敗したこともあり、「女性に弱い鉄人」と呼ばれたこともあった。

「負けたときは悔しくて家に帰らず、多摩川の土手に行って、川に向かって石を投げていたそうです。しかし、審査員をお客さんとして見るようにし、〝どうすればこの人たちが喜んでくれるのか〟と考えるようになってから、勝利することが多くなったそうです。そのかいあってか、複数回の10連勝超え、年間無敗記録を達成するなど大活躍。番組6年間の歴史の中、ただ一人、番組の初回から最終回まで鉄人の座を務め上げました」(テレビ誌ライター)

 心に残る名料理人であった。

(石田英明)

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