高額給与問題も先送り!? “元日銀マン”NHK新会長が「改革路線継承」を全否定した

 1月に就任したNHKの稲葉延雄新会長が3月1日、職員向けにメッセージを発信した。ところが、そこで稲葉氏は、前会長の前田晃伸氏が行った改革路線をいきなり否定したのである。NHKが前体制を根底から見直そうとするのは極めて異例なことで、この稲葉会長の発言には失望の声があふれた。

「稲葉氏は、前職こそリコーの経済社会研究所参与という肩書ですが、キャリアのほとんどは日銀で、ほぼ『官』の人。ここしばらくNHK会長は5代続いて外部の財界から迎えていた経緯があり、『官』の人物がNHKの改革の舵取りに相応しいのかどうかといった不安の声が上がっていたのですが、それが的中してしまった。いきなり改革を否定して『先祖帰り』しようというのですからね」(全国紙記者)

 若者のテレビ離れが深刻で「国民の半数しかNHKを見ていない」というデータまである中、今やNHKの在り方が根本から問われている。悪評高い受信料制度をどうするかという問題も突きつけられており、改革は待ったなしと見られていたのだが…。

「それゆえ前田前会長は、既存業務の効率化、受信料値下げ、ガバナンスの確立の三位一体の改革を打ち出していた。人事制度では、管理職の3割削減、早期退職制度の導入、採用職種の1本化を行ったのです。また、問題の多かった訪問営業を廃止し、7163億円あった業務支出を6609億円まで減らした」(前出・全国紙記者)

 ところが、この改革はNHK内ですこぶる評判が悪かったという。

「管理職を減らして早期退職を勧め、幹部登用には選抜試験を行うとしたので、中堅からベテランのウケが良いはずがなかった。前田前会長の徹底したスリム化には反対の声が少なくなかったのです」(前出・全国紙記者)

 そもそも今回の新会長人事は、いったんは「財」の人材である丸紅元社長の朝田照男氏と報じられたこともある。また、前田前会長も続投に意欲があったとされていた。

「それが覆されて稲葉氏に落ち着いたのも、前田前会長が自民党に十分な根回しを行わないまま改革を進めたために反発を食らったと言われています。いわゆる大物財界人ではない稲葉氏ならコントロールしやすいということでねじ込んだという見方がもっぱらです」(前出・全国紙記者)

 高すぎると言われる受信料と高額な職員の給与など、NHKには問題が山積している。稲葉会長がこれらの課題にどう取り組むのか、あるいは先送りするつもりなのか、注目されるのである。

(猫間滋)

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