会見が穏やかだったせいで、12球団経営陣はむしろ警戒を強めたという。
オールスター第1戦の試合開始に先駆け、労組・日本プロ野球選手会が会見を開いた。彼らは出場機会の少ない選手を対象とした「現役ドラフト」の導入を目指し、経営サイドとの話し合いを進めてきた。会見で語られたのは、その手応えについてだ。
「同日、選手会はかねてから予定していた臨時大会を行いました。そこで伝えられたのは、12球団経営陣が考える現役ドラフトの内容について。経営陣のまとめた意見書は『対象選手については球団が決める』とし、移籍の活発化を訴える選手会の希望とは大きく異なるものでした。なのに、炭谷銀仁朗会長(巨人)は『具体案を提示いたたいたことは前進だと思う』と、好意的に語ったのです」(スポーツ紙記者)
経営陣は意見書の前に、具体的な対抗措置を講じていたと見る向きもある。
どういうことかというと、トレードが行える期日は7月末まで。シーズン途中のトレードはどの球団も積極的ではない。だが、選手会の臨時大会前、今年は巨人、楽天、広島、中日、オリックスなど5件もの途中トレードがまとめられた。
「出場機会を選手に与える、移籍してプラスになるトレードを、12球団は行っている。だから、現役ドラフトは必要ないというアピールだったのかもしれません」(同前)
また、現役ドラフトについて、選手会は出場試合数においてある一定の数字を決め、それ以下になった選手全員を対象にしたいと考えている。そうなった場合、三軍制で若手を育てているソフトバンク、巨人、広島はたまったものじゃない。将来を見越して、故障歴のある学生選手を指名した他球団も同じことだ。
こうした球団側の難色が「対象選手は球団が決める」の意見書となり、それに対して「選手会が穏やかな会見を開いたのは、むしろブキミ」と、12球団経営陣は戦々恐々としているというのだ。
しかし、こんな声も聞かれた。
「選手会が現役ドラフトの導入を目指す背景には、戦力外通告受ける選手を減らしていきたいとの願いがあります。一方、トライアウトで結果を出せず、涙に暮れる選手とその家族がテレビで放送されるたびに球団は悪者扱いです。球団は選手に対し、最大限の配慮はしているんだと訴えたいところもあるので、現役ドラフトの導入案に対処したようです」(関係者)
とはいえ、今後、折衷案が見つからなければ、出場機会が生活に直結する選手たちの不満は爆発するだろう。ストライキという苦々しい歴史が繰り返されなければいいのだが…。
(スポーツライター・飯山満)