「マスクVSツイッター」が法廷決着へ!社員の士気ダダ下がりで互いに得ナシ?

 ついに「イーロン・マスクvsツイッター」の争いが、10月に5日間の審理を行うこと決定。法廷で直接対決することになった。

「ツイッター社が訴訟を提起していたデラウェア州の裁判所が、両者の声を聞いて19日に決定したもので、ツイッター社は9月の集中審理を、マスクは証拠開示に時間がかかるとして来年の2月13日以降を希望していたので、緒戦はツイッター社の勝利ということになります」(全国紙記者)

 念のためこれまでの経緯を振り返れば、マスク氏がツイッター社に5.6兆円での買収提案を行い、ツイッター社が提案を受け入れたのが4月のこと。ところが会社の合理化や情報開示を巡って両者の意向が反目するなど、なかなか事態はスムーズに進まず、特にスパムや偽アカウントがユーザー数の5%以下かどうかで対立。周囲には、マスク氏による買収価格を値切るための戦略と見る向きもあったが、マスク氏は5月に買収「保留」としていた。そして7月8日に「撤回」を表明。ツイッター社はこれに対し、12日に買収契約を履行するよう裁判を起こすに至った。

 トリックスターのような存在で知られるマスク氏は、ツイッター社が提訴の準備を進めていることを受け、実際に提訴が行われる前日の11日には、相手を挑発するかのように自身が大笑いする画像をツイッターに上げていた。画像にはそれぞれ「彼らは私にツイッターの買収はできないと言った」「そしてボット情報を頑なに開示しなかった」といった挑発コメントが付いていて、さらに次の更新では、俳優のチャック・ノリスがチェスをする画像を投稿。ノリス氏が1つだけの駒で、全ての駒が揃っている相手にチェスで戦っているというもので、マスク氏はこれに将棋の“詰み”を意味するチェックメイトにかけて「チャックメイト」と言葉を添えた。

 だが訴訟は互いに失うものが多く、マスク氏も相当不利な立場にありそうだ。

「マスク氏は買収の契約を結ぶに当たって、デューデリ(ツイッター社の中身の監査)は含まれていません。またツイッター社の訴状では、マスク氏が5月に保留を言い出したのはちょうどツイッター社の買収資金に充てるはずだったテスラ株の時価総額の約3分の1が吹っ飛んだ頃に符合するので、マスク氏が個人的な理由で撤回を言い出したと指摘していますが、まさにその通りでしょう。いずれにせよツイッター社では社員の士気はダダ下がり、もしマスク氏が負ければ、かつては欲しかったけれども今は欲しくない会社を手にすることになります。仮にマスクが勝ったとしても、10億ドル(約130億円)の違約金を払わなければなりません」(同)

 もちろん推定で2190億ドル(30兆2500億円)の資産を持つ『フォーブス』長者番付1位のマスク氏にとって、10億ドルなどはした金だろう。だが、マスク氏が買収を明らかにした4月には1100ドル以上あったテスラの株価は、その後ずっと下落していて、現在は700ドル台。ツイッター社の株価も、4月以前は35〜40ドル台の推移していたのが、マスク氏の買収が分かると45〜50ドル台に跳ね上がったが、先行き不透明になると元々の水準に逆戻り。

 どう転んでも、互いに利は少ないように思えるのだが。
 
(猫間滋)

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