新空港線「蒲蒲線」新設で東京モノレールが大ピンチ?

 今月6日、東京都と大田区は京急蒲田駅〜JR蒲田駅を結ぶ通称「蒲蒲線」新設の費用負担について合意したこと、2035年の開業を目指していることを発表した。

 現在は京浜急行の京急蒲田駅〜羽田空港の運行で、JR蒲田駅とは約800メートル離れている。徒歩だと15分ほどかかり、両駅間の移動はかなり不便だ。

 そうした事情から蒲蒲線の構想自体は40年前からあり、開業すればJRなど他の鉄道会社への乗り入れ次第だが東京駅や渋谷駅、新宿駅などから乗り換えなしで羽田空港に行くことも可能になる。いっぽう、今回の新設で存在意義を失いかねないのが東京モノレールだ。

「もともと羽田へのアクセスはモノレール一択でしたが98年に京急が空港駅開業で本格乗り入れを開始。しかも、モノレールは京急と違って羽田空港線しかないため、他の路線で補填することもできません」(鉄道ジャーナリスト)

 京急は以前から都営地下鉄や京成電鉄との乗り入れを行っていた。国土交通省「航空旅客動態調査」によると、現時点ですでにモノレールよりも京急優勢とのデータも出ている。

「それに京急なら新幹線など多くの路線が発着する品川まで一本で行けます。一方、モノレールの玄関口となる浜松町で乗り換え可能なのは、山手線と京浜東北線、地下鉄大江戸線の3本だけ。郊外に向かう人はさらにもう1回乗り換える必要があります」(同)

 東京モノレールの延伸計画も持ち上がっているが、今のところは構想に過ぎない。

「20年前、親会社のJR東日本が新橋駅への延伸計画を発表し、その後も一部メディアが東京駅延伸を報じましたが、同社は13年の定例会見で『事業化は難しい』とコメント。完全に白紙に戻したわけではないとはいえ、両社ともコロナ禍で業績が急落しており、現状ではかなり難しいでしょうね」(同)

 海沿いを走る高架線の東京モノレールは、車窓から都心やベイエリアの景色を堪能できるのが大きな魅力のひとつ。だが、今後生き残るためには利便性の追求が大きな課題となりそうだ。

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