「怪物の攻略法」が披露された。
5月27日のセパ交流戦で令和の怪物・佐々木朗希と対戦した矢野阪神は、ある秘策に出た。左バッターを7人も並べたのだ。
「左バッターを揃えやすい状況にもありましたが、佐々木が投げにくそうにしていたのは間違いないようですね」(球界関係者)
矢野燿大監督はスタメンDHにベテランの糸井嘉男を、レフトに高山俊を起用した。これで、スタメンに名を連ねた左バッターは7人。阪神は、前日の東北楽天戦では完封負け。今季12回目の零敗だ。昨季の完封負けはトータルで11試合だったので、50試合でそれを上回ってしまった。
そんな低迷する打線のテコ入れも兼ねて、この日の阪神首脳陣は「左バッター偏重」のオーダーを組んだ。
「スコアラーから佐々木に関する報告があがってきたんです。左バッターと対戦するとき、シュート回転して真ん中に入ってくる失投が多い、と。だったら、それに狙いを絞って、左方向に流し打ちをしていこうという作戦でした」(同)
2回表、2アウトから左バッターの糸原が“ベンチの指示通り”となるレフト前ヒットを放った。また、「走者を出すと、クイックモーションで投球バランスがおかしくなる」との報告もされていた。たしかに、4回には走者を一塁に置いた場面で、佐々木はワイルドピッチを記録している。
後続にマウンドに譲る6回までに阪神打線は得点を挙げることはできなかったが、「左バッターに対し、シュート回転するボールが多くなる」という情報に間違いはなかったようである。
この戦法は交流戦明けのパ・リーグ各球団にも参考にされそうだ。しかし、某球団のスタッフはちょっと異なる捉え方をしていた。
「佐々木にはシュート回転した抜けダマであっても、相手バッターをねじ伏せる威力があるってことがよ〜く分かりました」
9回表、千葉ロッテのクローザー・益田直也の投じたフォークボールを阪神・佐藤輝明がパワーですくい上げ、そのままセンターバックスクリーン横に飛び込んだ。こちらもケタ外れなパワーを秘めた怪物と言っていい。
怪物同士の対決は3打数ノーヒット、2三振。佐々木に軍配が上がった。試合は阪神が勝利したが、投打ともに「規格外のパワーにデータは関係ない」、そんなことを物語る一戦だった。これが“怪物”と言われる所以か…。
(スポ—ツライター・飯山満)