まさか銀行が「行商」を始めた? りそな銀行が5月17日から運用を開始した移動型銀行は、トラックの荷台部分にATMや相談窓口を備えた動く銀行で、東京都と大阪府の対面で相談したいという需要が見込めるところに出かけていくというから、発想はまさに行商そのものだ。
「銀行はデジタル化が進んで、わざわざ支店窓口まで行く必要はだいぶ減りました。加えて人口減もあって、業界全体としては過剰になった店舗の統廃合を急いでいるところです。その中でりそな銀行はリテールNO.1を目指すとしており、逆張りでDX化などで経費を節減しつつ店舗を重視する姿勢を示しています。移動型銀行が出張する東京の品川と北区のUR団地内、大阪の豊中・吹田市はりそなの店舗の空白地で、これを補うという狙いもあるようです」(経済ジャーナリスト)
愛称「移動店舗りそな号」の「りそなモバイルバンク」は、TV窓口やタブレット端末を用いて有人店舗と同様のサービスを提供するといい、ATMでの出入金(紙幣のみ)、振込・振替に、窓口ではローン資産運用の相談、新規口座開設、住所変更などの各種届出ができるという。
さてこの移動型銀行、大手では初の試みとのことだが、全国的に見た場合、意外に導入例は多い。
「2011年を境に、災害時の臨時店舗や高齢化による人口減少と店舗の統廃合の代替として徐々に増えてきて、多くの地銀、信金、信組、JAバンクなどで導入されています。ですから顔ぶれやネーミングは多様で、例えば磐田信用金庫は『ジュビロ号』なので聞けばどこの地域なのかがすぐ分かり、大垣共立銀行は『ひだ1号』といって、地方列車の名前のようでノスタルジー感があります。広島のもみじ銀行などは、『カープV号』で、カープの試合があると多くの客を集めるそうです」(同)
イオン銀行やセブン銀行も移動式のATM銀行があって、東日本大震災や熊本地震では被災地域に出張したという。
飲食でも特にコロナ禍では店舗を構えるリスクが顕在化し、キッチンカーの需要が伸びた。銀行も逆風の時代だけに、殿様商売を脱して自ら出向くくらいの姿勢が必要なようだ。
(猫間滋)