世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「朗希の白井球審問題は騒ぎすぎや」

 ロッテ・佐々木朗希が白井球審に詰め寄られた一件が波紋を広げた。普段は野球を見ない人まで巻き込んでの賛否両論。僕に言わしたら、昔はもっと高圧的な審判がいたし、大騒ぎするほどではない。ただ、朗希には「いい勉強にしなアカンで」と伝えたい。審判も人間なんやから、仲良くしといて損はない。

 将来、メジャーを目指す選手なんやから、審判を敵に回さないことを肝に銘じたほうがいい。もし、日本人がメジャーの試合で審判を侮辱するような態度をとったら、ひどい判定を受け続けるのは間違いない。

 4月24日のオリックス戦の「あの1球」は確かにいい球やったけど、ストライクともボールともとれる球やった。朗希の態度に関しては「えっ、今のがボール?」という感じでの苦笑いやったけど、それほど見苦しいものでなかった。だが白井球審からすると、あの1球だけでなく、積み重なったものがあったはず。高卒3年目の若い投手に判定を小バカにするような態度を繰り返されたと感じたんやろな。

 完全試合の次は8回完全でマウンドを降り、17イニング完全継続中で日本中が注目した試合やった。白井球審はいつも以上に緊張感を持って臨んでいたはず。160キロのストレートは見慣れていないし、普段より難しい仕事となる。1試合で100球以上、相手投手も合わせて約250球は見ないといけない。機械ではなく生身の人間がすることやから、微妙な判定は1試合に10球ぐらいはあって当然。それにイチイチ反応したり、文句をつけていても仕方がない。

 僕も現役時代に自信を持って見送ったボールをストライクと判定されて三振になったことが何度もある。そんな時はニコッと笑いながら「貸し!」と言ってベンチに下がった。パ・リーグの名物審判だった村田さんなんかは試合後に「あれはこっちが間違っていた。悪かった」と謝ってくることもあった。日頃のコミュニケーションが大事ということや。

 そうは言っても態度に出てしまうことはあった。盗塁のアウトかセーフはランナーが一番わかっている。完全にセーフなのをアウトにされて、両手で審判を突いてしまったことがあった。抗議の意味合いでなく、試合中は熱くなっているからついついはずみでの行為。でも、すぐ引き下がるし、退場処分は一度もない。

 今はリクエスト制度があるから選手と審判のトラブルは少なくなった。コミュニケーションの必要性も薄れたかもしれない。だから余計に朗希と白井球審の一件が目立ってしまった面がある。リクエストで微妙な判定が変わることがしょっちゅうあるし、審判は威厳を保つのが難しい。スタンドに何度もリプレーの映像が流れて、明らかな誤審の時は赤っ恥をかく。トラブルは少なくなったけど、ある意味、審判にとっては気の毒な時代と言える。

 アメリカのマイナーリーグでは、今季からストライク、ボールの判定にロボット審判が導入されているという。一切の感情抜きの判定となるけど、それもどうなんやろと思う。やっぱり人間が判定することでドラマが生まれるし、白井球審の甲高いコールなど、審判の個性も野球のひとつ。その瞬間は熱くなっても、試合後は互いに水に流せばいい。朗希も審判団も、ファンのために、グラウンドに遺恨は残してほしくない。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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