これもアウトドアグッズ!? モンベルで「茶」と「筆」グッズが愛され続けている理由とは

 暖かくなっていよいよキャンプシーズン到来。GW中にBBQやキャンプを楽しみにしている人も多いのではないだろうか? 

 アウトドア好きの人はもちろん、そうでない人にも有名なのが、国内大手アウトドアメーカーの一つである「モンベル」。テントや寝袋、ウェアなど初心者向けから本格派向けのギアまでさまざまなアイテムを展開している中、異色のアイテムながら長い間売れ続けている商品がある。

 それは「野点セット」。いわゆる茶道具一式、茶せんや茶杓、茶碗、なつめなどがセットになっているもので、持ち歩くことを考えたコンパクトサイズ。茶碗はメラミン製で割れにくく、収納する巾着の底部と側面には緩衝材としてスポンジが入っているので、リュックの中はもちろん、ぶら下げて持ち運ぶのも良さそうだ。野点セットの発売は2001年。なぜ20年以上も異色のアウトドアグッズが売れ続けているのか、モンベルに質問してみた。

 そもそも野点セットが誕生したきっかけはモンベル創業者、辰野勇氏の発案。元々、お茶や書を嗜んでいた辰野氏は、アウトドアで持ち運んで楽しめる野点や筆のセットがあればいいと考えたことから商品化。「アウトドアで遊ぶために、自分たちの欲しいものをつくる」というモンベルのモノづくりの基本姿勢から生まれた商品だという。

 発売以降、幅広い世代で売れ続けているという野点セット。「コロナ禍により野外で過ごす時間が増えた方も多く、アウトドアの楽しみの一つとして、興味を持っていただくことがあるようです」(モンベル広報部・小野 立さん)。

 野点セットに続き、2019年に発売したのは「野筆セット」。これも辰野勇氏が製硯師の青栁貴史氏と出会い、アウトドアで気軽に楽しめる硯のセットを作ろうと意気投合したことから生まれた商品だという。硯板は宮城県石巻市でとれる玄昌石、墨は日本最大の生産地である奈良の墨、筆は滑らかに書けるウサギの毛など、一つ一つにこだわりが感じられることも特徴の一つだ。

「野筆セットはおそらくですが、プレバト(MBS系)の『俳句の才能ランキング』から生まれた俳句ブームも人気の一因かと。番組の影響で『歳時記』を読む人が増えたという話も聞きます。番組の中で俳人の夏井いつき先生が、『俳句は経験したことを大事に』とよく言っているのもあり、自然の中ならいい俳句が詠めそうだと購入する人も多いのではないでしょうか?」(TVウォッチャー)

 自然の中でゆったり茶を嗜んだり、ふと浮かんだ一句を筆で書く極上の時間。山や海など、仲間と大勢でワイワイ楽しむのもいいけれど、自然豊かな場所で静かな時を過ごしたくてキャンプに向かう人も多い。「野点や野筆といった文化的な趣味を野外で楽しむための商品が長年売れ続けており、アウトドアの楽しみ方が多様化していることを感じています」(小野さん)

 野点セットと野筆セットはシリーズものではなく、あくまでも「自分たちが欲しいものをつくる」という姿勢で商品開発から生まれたものだという。今後も野外で穏やかな時を楽しむための”文化部系アイテム”が、モンベルを初めアウトドアメーカーから販売される可能性は高い。

(いじざわりかこ)

*画像は野筆セット9350円。野点セットは10450円(専用巾着がセット)

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