漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」には、結成15年以内というエントリー規定がある。スタートした2001年時の規定は結成10年以内だったが、大会は2010年にいったん終了。2015年に復活して今日に至るため、休止中に出場資格を失った芸人を救済すべく、結成から満15年以内に延長された。
M-1は、中川家が初代王者となった01年から10年までが第1期。この10年間で王者、ファイナリストになったコンビから、のちに作家として大成している芸人が複数いる。頂点は、お笑い界初の芥川賞作家となった又吉直樹だろう。綾部祐二とのピースは、10年のファイナリストだ。
初年度の01年、07年と08年の計3度も決勝戦に進出したのはキングコング。西野亮廣は上梓した絵本や小説、エッセー、ビジネス書のすべてが売り上げランキングで上位に食い込む、稼げる作家だ。同じく、執筆作が映像化されたのは品川祐。庄司智春との品川庄司は、05年に決勝舞台に立っている。06年に不良時代を書いた自伝小説「ドロップ」を刊行すると、08年に脚本・監督を務めて映画化された。
西野、品川と同じく二刀流ならぬ“他刀流”なのは、18年の王者であるNON STYLEの石田明。脚本家として携わった作品が映画化や舞台化。漫才師、脚本家、演出家の肩書きを持つオールラウンダーで、オリジナル脚本・演出を担う舞台「結—MUSUBI—」が現在上演中だ。
一方では、M-1黎明期を支えながらも、テレビから姿を消した芸人もいる。POISON GIRL BANDだ。04年、06年、07年と3度もファイナリストになっているが、現在はコンビとしての活動は休止状態。ツッコミの吉田大吾は、放送作家として作品や映像、番組を世に送り続けている。
「吉田さんはもともと、ネタ担当。この数年はニブンノゴ!の宮地ケンスケさんとともに、吉本興業とクリエイターのコンテンツ制作会社にも在籍しています。漫才台本も書いており、テレビ番組の構成もしています」(週刊誌記者)
POISONといえば、長髪で重い瞼の地味顔の相方・阿部智則のインパクトが強かったが、ブレーンは吉田だったのだ。
現在は第2期真っただ中のM-1。多角的クリエイターとしても大成する芸人が、今期からも現れるかもしれない。
(北村ともこ)