複数の米メディアが広島・鈴木誠也外野手に注目している。「今オフにもポスティングシステムを利用して米球界に挑戦する可能性が高くなった」と伝えているのだ。
メジャーリーグ指向が強いと言われる鈴木だが、渡米の時期は「国内フリーエージェント権を取得する2022年オフか、海外FAとなる23年オフが有力とされてきた。それだけに、今回の米メディアが申し合わせたように「鈴木特集」を組んだことに、何やら“作為”を感じなくもないのだが…。
「いや、昨年12月の契約更改の時点で『21年オフに動きそうだ』と、米球界では捉えていました。前田健太が渡米する際、広島は米球界志望を持つ選手に寛容という印象を受けました」
ア・リーグ中部地区の関係者がそう否定する。
鈴木は今年8月、米紙『ロサンゼルス・タイムズ』のインタビュー取材を受けた際、米球界挑戦への意欲を質問されていた。「チャンスがあれば、もっとも高いレベルの舞台で戦いたいとみんなが感じていると思います」と語っているが、「みんなが」と答えたところに、鈴木なりに言葉を選び、広島球団に配慮した感が伺える。
昨年の契約更改時、鈴木は「メジャー挑戦の話を球団としたのか?」の質問を受けている。そのとき、鈴木は「少しはしましたけど、深くはしていない」と答えていた。ポスティングで今オフにメジャー行きとなれば、日本のメディア、ファン、関係者はまんまと騙されてしまったというわけだ。
「シーズン中、球団幹部と何度か話し合いをしてきたようですね」(球界関係者)
鈴木はチームの中心選手だが、どちらかと言えば、プレーで後輩たちを牽引していくタイプだった。しかし今季は若手に積極的に話し掛け、これまでとは違う一面も見せていた。昨年の契約更改では3年連続で優勝したころと、現在のチーム力を比較するなど、自分の置かれた立場についても客観的に語っていた。今振り返れば、“らしくない言動”が随所に見られていたわけだ。
「終盤戦で広島は猛追撃を見せました。その快進撃は若手の成長によるもの。後輩を言葉でも指導してきた鈴木のおかげとも解釈できます」(同前)
米メディアがこぞって「特集」を組んだのは、「今が売り時」という球団と鈴木に向けたメッセージであったのかもしれない。代理人など具体的な動きはまだ見えていないが、鈴木が今オフの主役となりそうである。
(スポーツライター・飯山満)