8月27日から全国で劇場公開されているイ・ビョンホン主演の韓国映画『白頭山大噴火』。北朝鮮・中国国境地帯にある標高2774メートルの火山の大噴火を描いたパニックムービーで、韓国で820万人を動員する大ヒットを記録。だが、北朝鮮問題に詳しいジャーナリストは、現在関係が悪化している南北朝鮮に同作が少なからず影響を及ぼしていると指摘する。
「白頭山は朝鮮民族にとっての古くからの信仰の対象となっている山で、日本人にとっての富士山のような存在。しかも、第二次世界大戦中の抗日ゲリラの拠点で、金正日前総書記の生誕地とされています」
北朝鮮が登場する韓国映画はこれまで数多くあったが、今回の作品は地下核実験が噴火の引き金になったという設定になっている。これに金正恩総書記が怒り心頭だというのだ。
「北朝鮮にとっては今も聖なる山で、プロパガンダにも利用されています。映画は韓国では19年に公開されましたが、20年6月には南北交流の象徴だった北朝鮮内の開城工業団地内にある南北連絡事務所のビルを一方的に爆破。直接的原因は脱北者団体が金正恩総書記を批判するビラをまいたことだとされていますが、同団地での交流は16年から中断されていたとはいえ、爆破によって再開の目途は完全に立たないどころか国境地帯の緊張感が高まり、軍事衝突も懸念されています」(同)
しかしながら白頭山自体は活火山。火口は大きな湖がありそんな印象を受けないが、地下マグマの圧力によって毎年3ミリずつ標高が上昇し続けているという。
「今世紀に入ってから地割れや崩落が頻発しており、山頂の一部地域での温度上昇が衛星画像の解析からも確認され、ロシアは噴火の兆候があると発表しています。また、北朝鮮が行っている地下核実験も岩盤やマグマに悪影響を及ぼしている可能性は十分あり、それについても大変気がかりです」(地震学者)
映画自体はあくまでエンターテイメント作品だが、実際にはいつ噴火してもおかしくない。もはや荒唐無稽の話などではないのだ。