会社内でダメ社員の「排斥」が横行する理由が実験で証明された!

 東京オリンピック開催となってもなお、新型コロナウイルスの勢いは収まらず、企業の倒産も相次いでいる。

 東京商工リサーチの発表によれば、昨年の倒産件数は7773件、今年も約7000件に達する見込みだ。こうした中、リストラを行う企業も多い。希望退職者の数は、上場企業だけでも昨年は1万8635人、今年は6月3日時点で1万225人にも上る。

 しかし、ビジネスの世界では、同僚たちから「無能」の烙印を押されて居場所がなくなり、退職へと〝追い込まれる〟ケースも珍しくない。吊るし上げ会議や無視など様々な方法で退社を余儀なくされるものだ。このとき、なぜ同僚たちは無慈悲に「排斥」に加担することができるのか。社会心理学者は、そのメカニズムについてこう解説する。

「名古屋大学と高知工科大学が行なった最新の研究によれば、人は〝みんなのため〟であれば、他者を追放することに対してそこまで良心の呵責を感じないことが明らかになりました。実験の内容は、まず被験者たちに『組織内に2人の人物がいたと仮定し、そのどちらかを排斥しなければならない場合、どちらの人物を選ぶか』と問います。判断材料として渡されるグラフには、2人の組織への貢献度が示されています。このグラフを参考にしながら、被験者は排斥候補者を選択。次に、その人物の排斥を決心したときの心の痛みを6段階で自己評価してもらうというものでした」

 結果は次のようなものだった。

「多くの被験者は、組織全体への貢献度が高い人物を残す傾向がありました。たとえもう一方が自分にとって得となる人物であっても、集団の利益のためなら排斥するほうを選んだのです。また、組織全体への貢献度が高い人物を排斥するときほど、人は罪悪感を強く感じることも明らかになりました。言い換えればこれは、組織への貢献度が低い人物を排斥する際には、多くの人は大して心が痛まないということ。会社組織でいえば、仮に仕事のできない人が退職に追い込まれたとしても、同僚たちは表面上の言葉ほどには同情していないというわけです。この実験は、異なる参加者を対象に何度も繰り返し行われましたが、全て同じ結果となりました」(同)

 リストラや左遷される同僚を見て、可哀想と同情するのか、明日は我が身と身構えるのか。組織活動のなかでは、そうした場面にいずれ遭遇するだろう。その時、あなたも「アイツなら切られて当然」と割り切っているのかもしれない。

(橋爪けいすけ)

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