大谷翔平を動揺させた敵地ブーイングと“クセ者”が仕掛けた心理作戦

 あわや、乱闘。死球から生じるライバル関係…。アスレチック戦に先発したエンゼルス・大谷翔平が大ブーイングを浴びた(5月29日/日本時間)。6回裏、途中出場のマーク・キャンハの背中にぶつけてしまったが、それには布石があった。3回の第一打席でキャンハの頭部付近をかすめる投球があり、次打席目でぶつけたということで、地元アスレチックスのファンは「故意ではないか?」とざわついたのだ。

「頭部をかすめたときのほうがヤバかったですね。捕手のカート・スズキがキャンハの前に立ちふさがり、必死に宥めていました。大谷も故意ではないと頭を下げていましたが」(米国人ライター)

 すでに両軍がベンチから飛び出していたという。乱闘までいかなかったのはスズキのおかげだが、温厚な大谷の性格からして、故意にぶつけたとは思えない。投手側からの見解だが、一般論として、乱闘寸前となった場合、「ナメられたらいけない」とし、きわどいコースを改めて攻めることもあるそうだが、こちらも大谷の性格からして考えにくい。

「死球を食らった後、キャンハは痛そうな素振りこそ見せましたが、大人しく一塁ベースに向かいました」(前出・同)

 しかし、死球から遺恨が生じるのは、よくある話。こちらは人柄の良さは関係ないという。大谷はとんでもない相手とライバル関係になってしまったようだ。

「キャンハ? クセ者ですよ。ホームベースのギリギリに立って構えるから被死球も多く、今季はこれで10個を数えます。クレバーなバッターとしても知られています」(現地関係者)

 昨季の打率は2割4分6厘、本塁打は5本。だが、その5本の本塁打のうち4本が走者のいた場面で出たもので、得点圏打率は3割強という勝負強さを誇っている。

「遅咲きのスラッガーです。左投手との対戦のときだけ試合に使われていたんですが、19年途中からレギュラーを掴みました」(前出・同)

 飛躍の理由は、クレバーさ。走者を置くなど場面ごとにスイングを変えてきて、さらにカウントに応じて右方向へのバッティングに切り換えるなど、日本プロ野球界の2番バッターのような器用さも秘めている。

「60試合に短縮された昨季、2本もサヨナラ打を放っており、押し出し四球でついた打点も2つ記録しています。四球での出塁も多く、ボールをじっくり見てくるタイプなので、たとえ打ち取っても、対戦したピッチャーはイヤな印象を持つそうです」(前出・同)

 6回に食らった死球で無反応だったことで、エンゼルスベンチはブキミさを感じていた。キャンハの出塁後、大谷が失点を許したのはその術中にはまったからかもしれない。次回対決が注目される。

(スポーツライター・飯山満)

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