やはり“リアル北斗の拳”だった!? 400人が集団脱獄したハイチ首都圏の無法絵図

 今年2月上旬、大統領暗殺計画などクーデター未遂が発覚し、加担した警察や司法機関の幹部などが大勢逮捕された中米カリブ海の島国ハイチ共和国。その首都ポルトープランスは、あまりの治安の悪さから“リアル北斗の拳”と称されるほどだが、それを裏付けるとんでもない出来事が2月25日に起きてしまう。なんと同市郊外のクロワデブーケの刑務所で約400人の囚人が脱獄してしまったのだ。

 同刑務所は2012年誕生のまだ新しい施設。その割に警備体制が脆弱で、加えて現地の治安の悪さも災いしたのか、報道によれば脱獄発生当時の収容人数は定員のほぼ倍にあたる1542人で、このうち行方がわからなくなったのは約4分の1にあたる417人だという。

 ちなみに囚人たちは脱獄の際、刑務所長や複数の看守たちを殺害。その後、治安部隊との衝突もあり、犠牲者は少なくとも25名。その中には一般市民も含まれているという。

 なお、この大規模な脱走劇の首謀者のひとりされているのが、ハイチでも有数の犯罪組織のリーダーを務めるアーネル・ジョゼフ受刑囚。この人物、過去に何度も脱獄を計画しており、2019年にはSNSで事前に予告したせいか未遂に終わったが、2010年と2017年に二度にわたって逃亡に成功している。まさに脱獄に関してはルパン三世も顔負けの能力の持ち主だったのだ。

 だが、今回はオートバイに乗っていたところを検問所の警察官に射殺されている。それでも彼のように逃亡中に命を落とした囚人はごく一部。大半は今も逃げたままだ。

「クーデター未遂以降、ポルトープランスの治安はさらに悪化しており、その隙を突いての脱走劇だったと言われています。そもそも刑務所も警察も数が足りておらず、機能不全に近い状態。国民の間では『これならクーデターが起きたほうがまだマシだった!』と大統領や政府に対する不満が高まっています」

 そう話すのは、現地での取材経験もある国際ジャーナリスト。しかも、2016年にもハイチでは174人の集団脱走が起きており、小規模なものも含めると頻発している状況だとか。

「刑務所の設備が新しくても囚人で溢れ、管理する人間が不足している以上、こうした脱走は今後も繰り返される可能性が高いです」(前出・ジャーナリスト)

 400人の集団脱走という無法絵図が世界的に報じられては、ハイチの首都圏が“リアル北斗の拳”の汚名を返上するにはしばらく時間がかかりそうだ。

(高島昌俊)

※写真はイメージです

ライフ