昨年大みそかには18年連続出場となる「NHK紅白歌合戦」のステージに立った水森かおり(47)。多忙な歌姫が心がける体調管理の極意とは‥‥。
水森は実に、都合43都道府県を舞台にした曲を歌い、「ご当地ソングの女王」として知られる。昨年に歌手生活25周年を迎え、先月には新曲「鳴子峡」をリリース。シングル表題曲としては10年の「松島紀行」以来となる宮城県が舞台だ。これまでは恋に破れた女性の一人旅を描いた作品がほとんどだったが、今作は最愛の人を亡くした女性が主人公という内容になっている。
「今までにない切り口の歌なのですが、私自身、昨年7月に父を亡くしました。ご当地ソングは、聴いてくださる方に主人公になってほしいと思っているので、なるべく俯瞰的に歌うように心がけているのですが、この曲に関しては詩が心に沁みて感情移入してしまいます」
コロナ禍の今でこそ控えてはいるものの、全国津々浦々のご当地ソングを歌い上げていることもあり、通常は各地を駆け巡りコンサートやイベントにという日々に追われる。そのため健康維持には人一倍気を遣っているようだ。中でも、並々ならぬこだわりを見せているのが「睡眠」である。
「よく『睡眠不足だと肌や翌日の疲れに出る』と言いますが、私の場合は喉の調子にも影響が出るということに気がついたんです。それで睡眠に興味を持ち、自分なりに調べてみた結果、『1時間半の法則』を大切にするようにしています」
人間には、脳が活動しているレム睡眠と、脳が休息しているノンレム睡眠があり、この2つの睡眠がワンセットとなり、約1時間半の周期で繰り返される。その区切りのタイミングで起きると目覚めがいいとされており、これが同法則の元となっているのだ。どれだけの時間がベストなのかは人それぞれだという。
「そこで、1時間半、3時間、4時間半、6時間‥‥と睡眠時間を1時間半ごとに増やす実験をしてみたんです。その結果、7時間半だとちょっと寝足りなくて、10時間半だとかえって体が疲れてだるいなと。自分には9時間の睡眠がベストだと判明しました」
とはいえ、スケジュールの詰まった人気歌手が、9時間もの睡眠時間を確保するのは至難の業だろう。
「午前中からコンサートや収録の仕事が入る時もありますからね。それに、起きてからいきなり大声を出すのは喉によくないですし、人にもよりますが、だいたい6時間くらい経つと声帯が目覚めてくると言われています。朝に早起きして体を動かし体温を高めたり、朝風呂に入って汗を流して喉を温めたりもするので、確かに9時間の睡眠時間を確保するのは難しいです。ただし、そういうケースでも、少なくとも1時間半の法則には従って、7時間半にしたりしています」
喉の調子を整えるのはもちろん、自分に適した睡眠時間を確保するため、前日に前乗りできる仕事でも、あえて始発電車に乗って当日入りすることもしばしば。そのこだわりは相当なものだ。
「普段は『寝るのも仕事』という思いで、時間を計算して睡眠をとっているため、休みの前日は夜更かししたくなるんですよ。時間を気にせず夜中までテレビや動画を見たりするのが楽しいし、すごくぜいたくだなと思います」
仕事のためにルーティンをこなしているからこそ、睡眠の大切さをより実感しているのだろう。
さて、独身生活を謳歌している水森だが、長年ベッドを共にしている意外な「相棒」も睡眠効果を高めていると明かす。
「実は生まれた時から使っている布団があるんです。少し大きめの赤ちゃん用のものなのですが、首の部分がUの字になっていて、顔を出しつつ肩を完全に覆うことができる。体が冷えないので気に入っています。表面を何度も修繕しながら使い続けていて、長期の劇場公演の時はカバンに入れて持っていく。これはもう、私の嫁入り道具と決めているんです(笑)」
長い眠りから覚ましてくれる、白馬の王子様はいつ現れるのだろうか。
※「週刊アサヒ芸能」2月25日号より