父は有名歌手!? 警察官を蹴って逮捕された男の言い分【ギョーテン裁判傍聴記】

 男の父は大ヒット曲で知られる超有名歌手だったという。ケンカの仲裁に入った警察官に暴力をふるったとして逮捕・起訴された被告人にくだされた判決とは? お笑い芸人で裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火がリポートする。

 昨年4月に東京都世田谷区で、被告人が警察官の左足を1回蹴って職務の妨害をしたという事件の裁判が東京地裁で行われました。

 罪状認否で被告人は「蹴ったというのはわざとやったものではありません」と否認し、弁護人も「警察官による不当な拘束があり、振り解こうとした際に足が当たっただけで、無罪です」と無罪主張をしたのです。

 被告人はダブルミリオンのヒットを飛ばした歌手の息子で、本人も音楽活動をしていた時期もあったけどマスコミに取り上げられるのは事件を起こした時だけ。検察官の冒頭陳述によると、前科8犯という事なので最近は逮捕されてもニュースにもなってなかったようです。

 犯行当日は、被告人が勤めていた会社で男性社員と口論になりケンカが始まったという。お互いが掴みあっているのを見た別の社員が110番通報。駆けつけた警察官がケンカをしている2人を引き離し、その時に被告人が暴れて警察官の足を蹴ったというのが検察官の主張です。

 どうやら駆けつけた警察官が被告人に対し「薬物やってるのか?」と訊くと、被告人は「今はやってない」と答えたそうで、薬物使用が疑われるほどのケンカだったのかも知れませんね。そもそも社内でのケンカで110番通報をしたってのが普通のケンカじゃなかった事を想像させます。

 被告人は無罪を主張していたので、裁判は回を重ね、判決までに半年を要しました。

 そして2020年12月に判決が言い渡されたのです。

 結果は、懲役6月未決勾留日数130日算入。身柄が拘束されていたうちの130日は懲役から差し引きするという判決なので、実質1カ月半の実刑ですね。被告人の言い分は認められず有罪になった訳です。

 それにしても裁判やってる時間の方が長いような。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

大川興業所属のお笑い芸人であり、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載多数。

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