バーチャルの世界ではなく、「現実」となる可能性が高くなってきた。
エンゼルスのジョー・マドン監督がラジオ番組に出演し(5月17日/現地時間)、数日前に視察した大谷翔平のピッチング練習についてこう語ったのだ。
「ボールは力強かった。(投球数の)制限はなく、普通に見えた」
大谷は本拠地アナハイムに戻って調整を続けている。ピッチング練習を再開させたのは4月13日。新型コロナウイルスの感染防止策によって中断していたそれまでの約1カ月間が、投手復活に必要な時間ともなったようだ。
「本来ならば、ペナントレース中に投手の練習も重ねて行われる予定でした。指名打者でメジャーの試合に出て、マイナーの試合で登板する掛け持ちも避けられないと思われていましたが」(特派記者)
しかし、投手・大谷は“前哨戦”ですでに復活していた。チームメートのタイ・バトリー投手も日米合同の電話取材に応じているが(14日/同)、そこで語られたのは“登板結果”だった。
「パワーが全然違った」
どういうことかと言うと、MLB機構と同選手会はペナントレース開催を待ちきれないファンのためにオンラインでのテレビゲーム『MLB The Show』を開催した。そこで、エンゼルス代表として臨んだのがバトリーで、彼がゲーム上で編成したスタメンが「先発・大谷」だったのだ。
「バトリーはゲームでは勝ち星を伸ばせませんでしたが、ファンが『投手・大谷』の復活を望んでいるのを知っていて、そういうスタメンにしたのでしょう」(前出・特派記者)
エンゼルスは投打ともに補強に成功したが、気になるのはやはり投手陣だ。昨季はチーム防御率5・12でリーグワースト。トレードで2投手を獲得し、「ここに大谷の復活も加われば」とファンも期待している。昨年オフ、FA市場の注目スラッガーだったアンソニー・レンドンも加わった新打線への期待も「打者・大谷」がいることが大前提となっている。今季の打者・大谷はDHでの出場だろう。
「今季もクローザーが予定されているハンセル・ロブレスにやや陰りが見え始めています。レイズの監督時代には。満塁で“敬遠押し出し”を指示するなど、マドン監督はメジャーきっての”策士“と知られています。コーチ時代には、バリー・ボンズ対策として、外野手4人のシフトを提案するなど、トリッキーな采配でファンをびっくりさせることも少なくありません」(米国人ライター)
こうしたチーム事情もあって、ベンチ入りした大谷をリリーフ登板させ、ブルペン陣をカバーする采配も予想されている。また、DH制を解除した試合では、大谷が投手を務めながら主軸を打つ「リアル二刀流」にも注目が集まりそうで、ゲームのバーチャル世界のような試合が見られるかもしれない。いずれにしても、7月上旬の開催が予定されているペナントレースでは、早い時期に投手・大谷が見られそうだ。
(スポーツライター・飯山満)