新型コロナウイルスが、日本最大の発行部数を誇るマンガ誌の「週刊少年ジャンプ」を直撃した。同編集部の40代社員にコロナ感染の疑いが判明したことから、4月20日発売予定だった同誌21号の発行を中止。翌週の27日に「合併号」として発売することを発表した。同誌に連載中で、発行元・集英社の売上を支える“柱”でもある超人気作「鬼滅の刃」のファンも気が気でないだろう。
「マンガ誌では本誌の売上からはほとんど利益がなく、コミックを売るための素材という位置づけ。そのため発行元の集英社にさほどの痛みはないかもしれません。とはいえ編集部員の感染による発行中止という事態には集英社はもちろん、出版業界全体が震撼していることは確実。むしろ『ジャンプでまだよかった』との声も広がっています」(出版関係者)
前述のようにマンガ誌は本誌が1号くらい“ジャンプ”したところで業績への影響は軽微だ。しかし一般の雑誌ではそういうわけにはいかず、発行中止は死活問題にすらなりえるというのである。
「ほとんどの雑誌は新聞やテレビと同様に、広告ページの売上が収益の柱となっています。近年はネット広告にパイを奪われているものの、読者層によってはまだ雑誌広告の訴求力は大きく、雑誌広告全体では2019年実績で1675億円という巨大市場。ところが雑誌の発売が中止になると、当該号に掲載予定だった広告の代金はすべて返金となり、収支的にはゼロではなく大きなマイナスに。ほとんど広告が載っていないマンガ誌とは異なり、一般の雑誌では広告こそが命綱ですから、少年ジャンプの二の舞は避けようと各出版社はますますコロナ対策を厳重にすることは間違いありません」(前出・出版関係者)
新型コロナの影響ではすでに、文友舎が「JELLY 7月号」など女性ファッション誌の発売日を1カ月後にずらしたほか、主婦の友社では「Ray 7月号」を8月号との合併号に変更し、6月23日の発売は取りやめると発表済み。これらの女性誌では、ほぼ全ページでモデルを起用した撮影が必要なため、発売延期もやむなしとなったようだ。
それに対して一般誌では、紙のやり取りが必要ないDTP(デスクトップ・パブリッシング)のおかげで、リモートワークでも誌面の制作は可能となっている。出版業界では「今が昭和でなくて良かった」との言葉がわずかもの気休めになっているようだ。
(北野大知)