高野連とNCAAの対応で浮き彫りになる、日米スポーツの大きな差

 3月19日から開催予定だった「センバツ」こと第92回選抜高等学校野球大会。3月11日に史上初の開催中止が発表されると、各方面から次々と代替案や救済策が提唱されている。タレントの中居正広はプロ野球チームとの練習試合を提案。夏の甲子園を主催する朝日新聞社の言論サイト「論座」では春と夏の合同開催を訴えるライターも現れるなど、様々な議論が交わされている。

 しかし当事者である高野連(日本高等学校野球連盟)では中止について「苦渋の判断」「選手たちの安全を最優先に考えたうえでの結論」とうたっているものの、なんらかの救済案は提示していないのが実情。検討中かどうかも不明ながら、中止発表からの一週間で何も動きがないことは事実だ。その現状に米国スポーツ界との差が浮き彫りになっているという。スポーツライターが指摘する。

「新型コロナウイルスに対する対応が早かったのは、アメリカの大学スポーツを統括する『NCAA』(全米大学体育協会)です。NCAAでは3月12日、全米で高い人気を誇るカレッジバスケの決勝トーナメント『マーチマッドネス』の中止を発表。さらに野球やレスリングなど春から夏に決勝トーナメントが開催される全競技も中止することになりました。これを日本に当てはめるとセンバツに続いて夏の甲子園まで中止したことになり、NCAAの果敢かつ迅速な判断には驚かされます。これらの措置はもちろん、学生アスリートや関係者を新型コロナウイルスから守ることが目的であり、まさに『アスリートファースト』を体現していると言えます」

 そういった動きの早さはチケットの払い戻しにも表れている。NCAAでは中止された試合のチケットは30日以内に自動的に払い戻されると発表。ほぼすべてのチケットがクレジットカード決済されているアメリカならではの事情はあるものの、購入者としては自ら払い戻しに動く必要がないのは大きなメリットだろう。

 そしてNCAAでは単に試合を中止にしただけではなく、選手たちへの具体的な救済策も発表していた。スポーツライターが続ける。

「試合中止を発表した翌日にNCAAは、選手資格(エリジビリティ)を1年延長すると発表しました。アメリカの大学スポーツでは4シーズン分の選手資格が与えられますが、今回の発表により今季はプレー年度にカウントされないことになったのです。そのおかげで現在4年生の選手は来季、あらためて競技に参加することが可能に。アメリカでは学業面では大学を卒業しつつ、選手資格が残っている間は所属大学の部活動に参加できる制度となっており、日本の学生スポーツとは単純に比較はできないものの、今季を棒に振りかねなかった学生には大きな希望が与えられた形です」
 
 大学スポーツとは異なり、高校スポーツでは厳格な年齢制限が定められているため、高校球児にNCAAと同様の選手資格延長を採用することが不可能なのは明らかだ。とは言え新型コロナウイルスへの対応で次々と施策を打ち出すNCAAと比べれば、未だに救済案を提示しない高野連には動きの遅さが指摘されても致し方なさそうだ。

(北野大知)

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