この報せにキャンピングカー好きのオートキャンパーたちは歓喜したに違いない。トヨタ自動車が3月12日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに、有人月面探査車(ローバー)の共同開発について発表したもの。
トヨタとJAXAが開発するローバーは29年の打ち上げを予定しており、30年以降には宇宙飛行士が乗り込んでの月面探査を実施する計画だという。そのローバーが、従来の月面車とはまったく異なるフォルムを備えているというのだ。自動車ライターが興奮しながら語る。
「公表されたローバーのイメージ画像は“トヨタ製”のイメージを良い意味で裏切るもの。そのサイズはトヨタによると『マイクロバス2台分よりやや大きい』程度で、パッと見は装輪装甲車のようです。そして何より注目は、これまでの月面車がすべてオープンカータイプだったのに対して、このトヨタ製ローバーは密閉されたキャビンを備え、内部が四畳半程度の居住空間になっていること。これはまさに月面用のキャンピングカーだと言えるでしょう」
JAXAの計画によるとローバーには2名が乗車し(緊急時には4名)、地球時間で42日間の探査を行う。エネルギー源は水素燃料電池で、満充填で1000kmを走行可能。このパワートレインにはトヨタが世界で初めて市販した燃料電池自動車「MIRAI」の技術が応用されているはずだ。
「ローバーは全長6m・幅5.2mで相当な幅広ボディ。全長を抑えることでロケットでの可搬性を高めつつ、キャビンの大型化と耐転倒性能の向上を目的に、可能な限りトレッドを広くする設計思想なのでしょう。その車幅ゆえに市販車への応用は難しいものの、キャンピングカーと同様に居住性についてはかなり練り込まれているはずで、車室内のパッケージングにはマニアから熱い視線が注がれています。トヨタのマイクロバス『コースター』は大型キャンピングカーのベース車として高い人気を誇り、日本独特の“バスコン”というジャンルには欠かせぬ存在。それゆえローバーで培った技術をキャンピングカーにフィードバックすることが望まれています」
トヨタ自体はキャンピングカーを作っていないものの、同社製2トントラック「ダイナ」を基にキャンピングカーのベースとなるシャーシ「カムロード」を開発するなど、キャンピングカー文化への造詣は深い。それゆえマニアの間では10年後、「地球上を走るローバー」の登場に期待する声も大きいようだ。