2021年着工!トヨタが作る実験都市「Woven City」の目論見とは?

 トヨタは、2020年末に閉鎖予定の東富士工場跡地(静岡県裾野市)で新たなスマートシティを作る「コネクテッド・シティ」構想を発表した。70.8万平方メートル、東京ドーム15個分の広さで、2021年初頭にも着工する予定だという。

「その名は『Woven City』(ウーブン・シティ)。そのコアな目的は簡単に言えば2つです。CASE(自動運転)と、あらゆる交通機関の検索・予約・決済までを一括決済で済ますMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の導入・実証です。また広くは、AI&IoTを駆使したスマートホーム技術、パーソナルモビリティ、ロボットなどを導入して、構想の名前通りそれらをつなげた(コネクテッド)町を作ることですね」(経済ジャーナリスト)

 つまり、いま話題のスマート技術をふんだんに駆使した町を作るのだという。住民は2000名程度、社員やその親族、研究者、関連会社、取引先企業などの人が住むと思われる。豊田市はトヨタ城下町などと呼ばれてきたが、今度は名実ともにトヨタ・シティが誕生するということになる。

 こういった“実験都市”は実はこれが初めてではない。例えば、中国の雄安新区がそうだ。

「中国政府は2017年4月、習近平主席肝いりで新しい都市の建設計画を発表しました。これが雄安新区の構想です。雄安は北京の隣の河北省に位置し、中国北部の直轄である北京と天津とを結ぶデルタ(三角形)地域を形成します。先に都市作りで成功した深セン・上海の例を採り入れながら、なかなか都市としての発展が進まないデルタ地域の一体型発展を試みようというものです」(同前)

 これにより、有名な北京の渋滞・大気汚染などの環境問題、公共サービス不足を解消し、ついでにシリコンバレーのようなハイエンドの産業拠点を築くのだという。もちろん自動運転や顔認証、無人スーパーなどの先端技術を駆使した新たな都市に生まれ変わらせながらだ。計画では、2050年を目途に1000万人都市を目指すとしている。

 中国での“実験”なので当然、政府主導になるが、カナダのトロントでのそれはグーグル主導だ。

 グーグルの親会社のアルファベットは2017年10月、グループ会社の「Sidewalk Labs」がカナダのトロントの4万8500平方メートルの土地を再開発する事業を落札、交通を円滑にするために交差点にセンサーを設置したスマートシティに生まれ変わらせるとした。

「近未来型都市と言えば聞こえはいいですが、一方で要はお得意のビッグデータの収集目的でもあるわけです。黙って従う中国と違い、こちらは地元住民から『我々はモルモットではない』と反対の声があがり、訴訟沙汰にもなっています」(同前)

 テクノロジーの動きが土地そのものまで変えてしまう時代が来たということか。

(猫間滋)

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