清原和博「西武コーチ」就任の黒幕(3)後人に伝承すべき打撃技術

 一方、仮に清原氏が現場復帰を許されたとしても、指導者としては未知数である。一流選手が必ずしも一流の指導者になれるとは限らない。それでも、西武時代の先輩であり教育係でもあった、野球解説者のデーブこと大久保博元氏は言う。

「キヨはとにかく優しいから、根気強く選手に向き合う指導者になると思う。私が5回で改善されなければあきらめるところを、根気よく1万回でも指導しますよ。現役当時、右バッターで福岡ドームの右翼席にホームランを打てる日本人はキヨくらいだった。ボールも飛ばない時代で、甲子園球場でスタンドインさせるのも一苦労した。彼の打撃技術は後人にしっかりと伝承していくべきなんです」

 なんと言ってもその代名詞は広角打法だ。500本以上ホームランを打った日本人で、レフト・ライト・センターの3方向に100本以上ずつ放り込んだのは後にも先にも清原氏だけである。大久保氏が続ける。

「我々の現役時代に人一倍練習をしていたのは秋山幸二さんとキヨの二人。秋山さんはこれでもかってくらいマシンで打ち続ける。それに対してキヨはひたすら素振りをする。試合前ギリギリまで一人で振っていた。怪物と呼ばれた高校時代にも『打てなかったらどうしようって常々ナイーブになっていた』ことを打ち明けてくれたことがあった。だから、たくさん振り込んだ。キヨの打撃技術は努力で確立されたものなんです」

 ファンだけでなく、少なからず球界OBも清原氏の球界復帰を待ち望んでいるのだ。同じく野球解説者の伊原春樹氏は復帰には理解を示しつつも、釘をさすことを忘れなかった。

「でも、執行猶予が明ける来年6月にすぐ復帰とはいかないだろう。まずは新聞やラジオで解説をして、世間に認めてもらうことが先決。5年先、10年先になるのかわかりませんが、地道に活動していくしかありません。でも彼はまだ若い。この先、球界を指導してもらう日が来るでしょう」

 今の清原氏には後押ししてくれるフォローの風が吹いている。渡辺GMの熱意が、強固なフロントを動かすだろうか─。

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