投手も打席に入るセでは、その代え時を巡っての駆け引きも見どころだ。DH制導入で、その攻防が失われるのは寂しいことかもしれない。
時代は変わり、先発、中継ぎ、抑えと投手の分業制が主流になっている。先に江本氏はDH制が投手育成に直結していた時代について解説してくれたが、DH制を採用しているパでも、今シーズンの規定投球回到達者はたったの6人。救援投手を先発させるオープナーを取り入れた日本ハムに至っては、完投数が有原航平(27)の1回のみである。
「現状、DH制は打者のためにある制度になっています。野手の育成に力を注ぐ反面、投手力をおろそかにしているチームも見受けられます。打つことだけに気を取られていると、CSで敗退した西武のように足をすくわれますよ。なんといってもリーグ最下位の防御率なんですから」(江本孟紀氏)
そう、西武は2年連続でリーグ優勝しながらも、2年連続のCS敗退となった。DH制を味方につけた「山賊打線」の破壊力はあれど、投手力の底上げなくしては日本一にはなれないことを証明する形になっている。
そんな西武が辛酸を舐め続けるCS。2位以下のチームの下克上が目立つため、その存続の是非も問われている。
しかし野口寿浩氏は、選手たちに好影響を与えると、CS開催に理解を示す。
「CS争いはシーズン終盤まで白熱しますから、選手たちのモチベーション維持になります。今季の阪神の終盤の6連戦なんて、選手たちはシビれまくっていましたよ。『緊張しながらプレーすればいいんだよ』と、意外にも冷静なのは矢野監督くらいのものでした。この緊張感は将来的に選手たちの財産になりますよ」
一方、江本氏は否定的で、
「CSは廃止すべきです。リーグ優勝したチームが報われませんから。優勝チームのパレードもCS敗退だとシラけちゃいます。仮に存続させるにしても、1位と2位だけ、それも1位のアドバンテージを厚くすべきでしょう。そもそも3位のチームまでとする根拠はありません。あくまでメジャーリーグのポストシーズンを踏襲しているだけなのです。導入当初こそ、リーグ優勝後の消化試合で観客動員数を低下させないための施策でした。ところが時代は変わり、野球を球場で観戦する人は増加傾向ですから」
確かに、借金を背負ったチームが日本一になる可能性が残される制度には一考の余地があるだろう。