プロ野球では、普段試合を観戦できない地域のファンに向けた取り組みの一環として、本拠地以外での「地方公式戦」が行われている。しかし、2025年の開催数は全24試合にとどまり、ピークだった1989年の95試合から約4分の1にまで激減していることが分かった。
今シーズン、地方での主催試合がゼロの球団は、広島、日本ハム、ロッテの3球団。中でも日本ハムは、2004年の北海道移転以来、コロナ禍の20年を除いて毎年道内各地で地方試合を開催していたが、新庄剛志監督が就任した22年シーズンを最後に行われていない。
「その背景には、23年から本拠地をエスコンフィールドに移転したことがあります。以前の札幌ドームは“借り物”だったため、使用料が高額なうえ、広告収入も見込めず、売店の運営すら球団ができなかった。『奴隷契約』と揶揄されたほどで、地方開催は収益確保の面でも重要だったのです」(スポーツ紙記者)
一方、メジャーリーグ(MLB)では、今年3月にドジャースとカブスが東京で開幕戦を行ったほか、韓国やイギリス、メキシコ、プエルトリコでも公式戦を開催しているが、米国内では基本的に各球団の本拠地でのみ試合が行われる。日本のように国内各地で地方開催を行う文化は、MLBにはない。
「米国では30球団が全土に散らばっており、マイナーリーグもルーキーリーグからAAAまで5階層存在します。これに加えて独立リーグもあるため、地方でもプロ野球を生観戦できる環境が整っています」(同記者)
なお、日本ハムの2軍は、イースタン・リーグの公式戦として、5月17・18日に函館、8月には旭川での試合を予定している。1軍戦での観戦機会が減った一方で、ファームの試合には実績や知名度のある選手が出場することもあり、地元ファンの注目も集めている。
とはいえ、「やはり1軍の試合を生で見たい」というのがファンの本音だ。特に北海道は広大で、札幌圏以外に住む人々がエスコンフィールドまで足を運ぶのは容易ではない。そうした地域のファンのためにも、今後は再び地方開催を通じて“プロ野球をもっと身近に”してほしいものだ。
※写真は、帯広・森野球場で行われた日本ハムの公式戦の様子