昨年6月、21年施行の食品衛生法の経過措置期間の終了に伴い、許可制となった漬物の製造・販売。しかも、新たに認可を得るには厳格な基準に沿った製造施設を整備する必要があった。手作りの漬物などを地元の物産店などで販売していた小規模な業者にとって高額な設備導入は割に合わず、「漬け物クライシス」として多くのメディアが取り上げた。あれから間もなく1年が経過するが、漬物業界はどう変わったのだろうか?
帝国データバンクの発表によると、昨年1-9月期の統計だが漬物店の倒産(※負債額1000万円以上)が8件、休廃業や解散が18件発生し、計26件で過去最多ペースだったことが分かっている。
「ただし、他にも複数の食品加工を扱っている小規模業者の中には漬物部門を閉鎖したところもありますし、農家など個人で製造していた場合も例外ではありません。食の安全を守るための法規制は必要とはいえ、設備投資が可能な一定以上の資本力を持つ業者以外は淘汰される形となったのも事実です」(食品業界紙記者)
実際、ネット上では《道の駅や直売所に置いてある漬物の品数、種類が減った》《ラベルを見たら製造元が地元以外の業者で購入する気が失せた》なんてコメントも。
経過措置期間が終了するまでは数多くの漬物を販売していた土産物店の店長は、「仕入れ先が限られてしまい、漬物コーナーは以前のような魅力的な売り場でなくなってしまった。売り上げも落ちています」と話す。
また、手造り漬物を無人販売所に置いていた農家の女性も「今は自分たちで食べる分しか作ってない」と明かす。
製造を中止せざるを得なかった少量生産の商品の中にも人気の漬物が多かったのは事実。このまま漬物文化が廃れることにならなければいいが…。