ロシア西部クルスク州でロシア兵とともに交戦に参加しているとされる北朝鮮兵。その数は1万数千人といわれるが、生死と背中合わせの状況の中、今まで北朝鮮では味わったことの事のない異国での自由な生活に、浮足立つ若い兵士も少なくないといわれる。
一部メディアでは、北朝鮮兵士たちが人生初のSNSに感動。「アダルト動画」をむさぼるように閲覧している、とも報じられたが、今度はアルコールを飲みたいがため、なんと個人用応急処置キットのアルコールワイプと消毒液を摂取した北朝鮮兵士が死亡したと報じられ、驚きの声と波紋が広がっている。
今回、北朝鮮兵士の“アルコール”摂取による死亡を報じたのは、世界の紛争地域を報道するデジタルメディア「ノエルリポート」。同メディアは、ロシア軍の「第810独立親衛海軍歩兵旅団」副司令官の署名入りの軍事報告書のなかに、2名の北朝鮮兵士がアルコールを摂取し死亡した、という記述があったと伝えたが、
「2人は消灯後、応急処置キットの消毒液などを摂取し、午後に遺体で発見されたとしています。加えて報告書の中には、死亡には至っていないものの他にも『飲用を目的としていない』アルコール含有物質を摂取した北朝鮮兵士が数多く存在する、という記述があったという。日本でも戦後間もない時代、メチルアルコールを薄めたものが出回り、それを飲んで命を落としたり失明する者が続出したことは有名な話。そんな状況が軍の中で蔓延すれば、戦争どころの話ではなくなってしまう。ロシア軍の上層部も北朝鮮兵士の扱いに頭を痛めているのではないでしょうか」(外報部デスク)
北朝鮮の男性はおおよそ15歳頃から酒を飲み始め、「飲める量が男の度量の広さを表す」「飲める男ほど使える男」などという意識が強いという。北朝鮮はビールが有名だが、それでも値段は中国元で10元ほど。食うや食わずの国民が頻繁に飲めるものではない。そのため、多くの国民がトウモロコシやドングリ、おがくずなどで作った「ノンテギ」と呼ばれる密造酒を作っているという。
「北朝鮮では酒の密造は違法行為。保安署(警察署)が取り締まりを行い、見つかれば処罰の対象になります。とはいえ、取り締まる側の検察所の検事や保安員も家で普通に密造酒を作っているといいますし、権力を見せつけるために昼間から酒を飲んでいる。しかも、賄賂を渡せば見逃してくれるため、飲酒運転による事故が後を絶たない」(同)
だが、毎日の食事もおぼつかない国民の中には、密造酒さえ作れない者も少なくない。結果、「人減らし」のため、適応する年齢を待って子供を軍隊に送り出す。しかし、兵力を養うことは、北朝鮮の国家負担となるため、兵士たちの待遇はまったく改善しないどころか、過酷さを増しているのが現状だとされる。
「韓国国防省の報告書によれば、朝鮮人民軍末端兵士の月給は700北朝鮮ウォン(現在のレートで約121円)。これは、おおよそ市場で売られている冷麺1杯分。そのため、飢えに耐えきれなくなった軍人らは、ネズミやヘビ、カエルを貴重なタンパク質補充食料としていることもよく知られる話で、とてもではないが酒など飲めない。そんな環境にいた北朝鮮兵士たちが、戦場とはいえロシアに送られてくるわけですからね。そんな状況で士気が高まるはずはない。まだまだ大混乱が続くことになるでしょうね」(同)
北朝鮮軍の総兵力は約120万人とされ、韓国軍(66万人)に比べ数だけは圧倒的だが、その中身は悲劇そのものなのかもしれない。
(灯倫太郎)