現職の小池百合子氏か、それとも「自民党帰りをしている小池さんでは改革はできない」、「小池都政をリセットするのが私の使命」と、立憲民主党参院議員の椅子を捨ててまで出馬表明をした蓮舫氏か。蓮舫氏が立候補を表明したことで、「非自民」や「反小池都政」といったスローガンが一人歩きし、首都圏一極集中や高齢化など東京都政の具体的な政策論争とは別に、知名度抜群の“女の戦い”という様相となった東京都知事選挙。7月7日の投開票に向け、これから1カ月はかなり盛り上がりそうだ。
だが、誰が新都知事になったところで、おそらく絶対に進展しないであろう懸案を東京都は抱えている。石原慎太郎都知事時代に集めた、尖閣諸島買い取りのための寄付金約14億円の扱いだ。
「2008年から尖閣諸島沖で中国船の領海侵犯が多発し、国が手をこまねいているのに業を煮やした石原氏が『東京都が尖閣諸島を守る』と買い取りをブチ上げたのが、12年4月。当時の猪瀬直樹副知事が寄付金を募ることになり、13年1月の打ち切りまでに約14億8000万円が集まりました。ところが12年9月に当時の民主党野田佳彦内閣が、地権者と話をつけて約20億5000万円で購入し国有地としたため、使途を失ったまま現在も“塩漬け”になっているのです」(都政記者)
都には「尖閣諸島ホームページ」があり、寄付金は「尖閣諸島活用基金」として約14億円がプールされているとしている。当初の14億8000万円のうち8000万円は、12年9月2日に行った都の現地調査や広報活動などで使われ、差し引き約14億超が基金として残っているのだ。
日本が買い取った以上、使い道が無くなったわけだが、買い取り意外の目的外使用をするわけにもいかないし、10万人を超えた寄付者には匿名のものも多く、返すに返せない。仕方なく、使い道がないまま眠っているというわけだ。
それから現在まで12年以上。言い出しっぺの石原氏は「新党を作る」と都知事を辞任。22年に亡くなり、もうこの世にはいない。その間、猪瀬氏、舛添要一氏へと都知事が変わるも、塩漬け状態は変わらない。
「小池さんが都知事になってから、人工衛星による監視システム作りなどで国に活用してもらうよう、政府と話し合いをしたいと述べていましたが、結局そのまま。そもそも石原さんが国にケンカを売ったわけで、困ってもいない塩を送られても国が受け取るはずがないでしょう」(同)
都の尖閣HPでは、国の予算編成に都が提案用要求を行ったとの「最新情報」が上げられるのが恒例行事化し、最新では23年12月にアップされている。要はタダでお金をあげると言っているものの相手にされていないわけで、贅沢な悩みがあったものである。
(猫間滋)