昨年10月のシカゴマラソンで2時間0分35秒の世界新記録を打ち立てたケニアのケルビン・キプトゥムが、交通事故で他界したことが分かったのは2月12日。夢の2時間切りが期待されていた選手だったこともあり、SNS上には驚きと悲しみの声が飛び交った。
ケニア西部のチェプコリオ出身のキプトゥムは、2022年12月にバレンシアで2時間1分53秒という驚愕のデビューを果たし優勝。昨年4月にはロンドンで悪天候の中、2時間1分25秒の歴代2位の好タイムで優勝。そして10月、シカゴで世界記録を塗り替えていた。まだ昨年12月に24歳になったばかり。あと35秒で2時間切りが見えていただけに、SNS上では「このような形で有望選手が亡くなるのは悲しすぎる」と落胆が広がっている。
キプトゥムはケニアのカプタガットで車を運転中に事故を起こしたといい、「運転手を雇っていれば…」との指摘もあるが、ケニアの交通事情は日本とはかなり異なっている。
「ケニアは未舗装や陥没、水たまりなど道路事情が悪く、ヘッドライトや方向指示器の破損など整備不良車も多い。急発進や急停車など運転マナーが悪いドライバーも少なくなく事故が多発し、日本と比べると約8倍も交通事故による死亡率が高いのです。昨年7月には大型トレーラーが複数の車両に突っ込む事故が発生し、少なくとも55人が死亡しました。キプトゥムの死亡事故についてはまだ詳細不明ですが、このようなケニア特有の交通事情が関係している可能性はありそうです」(スポーツ紙記者)
2006年8月には、箱根駅伝史上初の留学生として活躍したジョセフ・オツオリが一時帰国中のケニアで自動車を運転中、対向車線を走っていたバスと正面衝突する事故に遭い、37歳で急死している。期待の星のあまりにも早すぎる死は、陸上界にとって大きな損失といえるだろう。
(ケン高田)