「異次元の少子化対策」として、政府の「こども未来戦略」が28年までに3.6兆円を充てる案を打ち出した。財源としては、公的医療保険に上乗せして高齢者を含む広い世代から徴収する「支援金」案が示されている。またしても社会保険料の値上げだ。
子供を3人以上扶養する世帯は大学の入学金・授業料が所得制限なく無償化されるというが、だがそれも「無償化」と言いながら実は額に上限があったり、第1子が扶養を外れると対象外となる可能性があったりと、かなり目くらまし感が強い。それ以前に、子供を3人ももうけて大学に行かせられる家庭であれば相当な勝ち組だと思えるのだが。
そんな「非異次元」ぶりを嘲笑うかのようなデータが示された。12月12日にリクルートブライダル総研が公表した「恋愛・結婚調査2023」なのだが、全国の20~49歳の未婚の男女1200名を対象に恋愛や結婚についての意識調査を行ったところ、恋人がいる人は29.7%で、20代で1度も異性と付き合ったことのない男性は46%、女性も29.8%で、いずれも過去最高を記録したという。
これら未婚の男女のうち「(いずれは)結婚はしたい」と考えている人が46.1%いる一方、「どちらともいえない」「(今後も)結婚はしたくない」が5割以上を占め、結婚に消極的な理由としては「金銭的に余裕がなくなるから」(36.4%)、「行動や生き方が制限されるから」(35.8)が1位、2位に来ている。
「若年層で金銭的負担の理由から結婚に後ろ向きな傾向は、今回の調査に限らず以前から指摘されているところです。例えば厚労省が9月29日に公表した『労働経済白書』によれば、年収200万円未満の20代男性で結婚している割合は1割という数字を上げ、少子化を食い止めるのは『若年層を中心に賃金を引き上げていくことが重要だ』と結論づけています。政府は賃上げと税制優遇を強化していますが、最初に恩恵にあずかるのは大企業の社員がほとんど。非正規となると最低賃金は23年10月に平均時給がやっと1000円は超えたものの、これは都市圏の時給が高いためで、地方になると800円台とまだまだ低い。このままいくと、『1割』の数字も割り込むことになるでしょう」(経済ジャーナリスト)
今回の調査で「いずれは結婚したい」と回答した43.5%も、一昨年の47.1%から大きく後退している。政策からこぼれている人が増えていることを示しているのではないだろうか。
(猫間滋)