現在、夢洲では関連施設の建設や上下水道の整備などが急ピッチで進められているが‥‥。
「万博開催は大阪だけでなく、日本全体が大きな損失を負う。中止に舵を切るべきでしょう」
こう訴えるのは、元衆院議員の安藤裕氏だ。自身のYouTube「安藤裕チャンネルひろしの視点」でも万博の問題点を指摘してきた。安藤氏が続ける。
「2024年問題で、最も負担を被るのが建設業と運送業と言われています。人手不足がさらに顕著となるのに、その大事な人材を万博に一極集中せざるを得ない。だったら、もっと生産性の上がるインフラ整備にリソース(資源)を集中させた方がいい。作ってすぐに壊すような事業に大事な人材と予算を使ってしまうと、その間、経済成長のための投資ができなくなります。日本にとってものすごい損害と言えます」
安藤氏の批判の矛先は、吉村洋文大阪府知事が共同代表を務める「日本維新の会」に向けられる。
「維新の会は大阪都構想が頓挫して、政党としての存在意義が薄れた。大阪万博はその状況を挽回するための政策で、政治的な意図が見え隠れしています」
大阪万博の閉幕後には大阪IRこと統合型リゾートとカジノの開業を見据える。IRには夢洲のインフラ整備が必要で、「そのために万博を誘致したのではないか」(在阪メディアの記者)とも囁かれるほどだ。
万博の来場者数は2820万人を見込んでいる。輸送能力を高めるため、大阪メトロ中央線を「夢洲駅」(仮称)まで延伸する予定だが、大阪都心を走る高速道路「淀川左岸線」を夢洲まで通す工事は大幅に遅れることとなった。
「もともと万博に向けて整備が行われてきましたが、地盤異常による工法の変更によって大幅な遅れが生じました。それに加えて、万博用にシャトルバス専用道路を作らなければならなくなり、完成は最大8年遅れとなる見込み。余計な工事で整備費は膨らむばかりです」(在阪メディアの記者)
加えて、万博が実際に始まれば、大阪が外国人観光客でごった返すのは間違いない。交通インフラのパンクが予想され、関西経済連合会は早くも沿線企業に対し、時間差出勤やテレワークを呼びかけている。
さらに中国人の団体旅行客が8月から解禁されたとあって、関西の主要観光地ではすでにオーバーツーリズムの状態。その代表例がタクシーと宿泊施設で、特に深夜の時間帯は、タクシーの確保も困難となっている。
「コロナ禍でタクシー需要が減り、退職した運転手も多かった。同時に、業界的に超高齢化が進行しているので、深夜の台数がかなり減っている。アジアからの観光客が増えた今も補填できていません」(在阪のタクシー会社関係者)
それでも、人材難さえ解決できれば、万博特需に沸くのでは、と〝甘い夢〟にしがみつく関係者。しかし、一概にそうとも言えない事情がある。コロナ禍以降、外国人観光客の来日が解禁されると、再び違法の白タクが増加、空港周辺で活発な動きを見せている。その大半は在日中国人らが運営する白タクで、メインの顧客は中国人観光客の中間層から富裕層。中国版のソーシャルメディア「微博」を通じて交渉するため、日本の警察当局も摘発に苦慮しているのが現状だ。
同じように万博開催によって宿泊施設の不足に陥っても、「違法民泊」を利用する中国人観光客は多いと見られている。来日して7年目の中国人男性が言う。
「利用者は、経営者が日本人でも中国人でも何人でも構わない。でも、中国語ができるのが絶対条件。中国人にとって違法か合法かは関係ないから、安くて便利だったら利用する。それだけなんですよ。大手企業は中国人を雇用して対応しますが、勝負する土俵が違う。価格競争では中国式の経営に絶対に勝てない。こうしたビジネス、日本人は不得手で、流暢に中国語を操る人材もほとんどいませんよね。中国人を見てください。日本語を話せる人がたくさんいますよ。日本人はビジネスチャンスを放棄している」
中国から観光客が大挙来日していちばん喜ぶのは中国人経営者かもしれない。