日経平均は高値更新でも楽天G株は下落の一途 モバイル事業、楽天イーグルス売却話も…

 日経平均株価の好調が止まらず、6月13日時点で3万3000円を超えてバブル後の高値を更新する一方、楽天グループの株価が下げっぱなしで止まらない。今年は概ね600〜700円の間を推移していた株価が5月に一気に下落して、6月に年初来安値をつけ、現在は550円あたりをさまよっている。

「2月に公表された決算では3700億円を超える赤字、5月に行われた四半期決算でも825億円の最終赤字。グループの他事業で好調に上げている利益を楽天モバイルに注ぎ込んだため、というのはもはや言うまでもないでしょう。ところが5月12日の金曜日に700円を超えていた株価は、週が明けると600円前半にまで急落。理由は明確で、12日にグループが20%保有していた西友株を全て売却したこと。さらに16日には第三者割当増資の実施を発表し、三木谷浩史会長兼社長の関連会社はともかく、全く外部のサイバーエージェントや東急を相手に新株発行を行うとしたからです」(経済ジャーナリスト)

 前者は持てる資産は切り売って楽天モバイルに投入、もしくは楽天モバイルの資金繰りのために行った社債の償還に充てるため。後者は新たに株券を発行してやはり楽天モバイルに注いだ資金を充当するため。しかし新株を発行するから株式は希薄化し、既存株主は面白くない。いずれにせよ結局は楽天モバイルという“穴の空いたバケツ”に金を注ぎ込むためだから当然、株は売られ、株価は下落する。

 すると出てきたのが、楽天モバイルや楽天イーグルスも売却対象になるのでは?という話だ。モバイルに関しては、ホリエモンこと堀江貴文氏が自身のYouTubeで「そろそろAmazonなんかに売っちゃったらどうだろうと」と〝提案〟している。曰く、AmazonはアメリカでMVNOの格安携帯事業を始めようと通信キャリアと交渉中で、Amazonにとってマーケットの大きい日本でも同事業を行う場合にもメリットが大きい。また、Amazonに買ってもらうと莫大な資金で基地局を建設できるし、将来的に楽天モバイルに割り当てられると言われるプラチナバンドでも、外圧という形で実現しやすいだろうと説明する。確かに、非常に合理的な考えだ。

 楽天イーグルスに関しては、一部週刊誌が証券アナリストの口を借りて、その可能性について報じた。だから双方とも正式な話でも何でもないが、こういう話が出てくるくらい、周囲からはいかに楽天が窮地にあるかのように見えているかを物語っている。

 さらに堀江氏は、今回の第三者割当増資で、三木谷氏が自腹を切って金集めをしているため、株の保有割合で会社の支配権を失いつつあることにも言及している。

「増資以前は三木谷氏が本人や関連会社、親族などを通じて3分の1を保有していたが、現在は28%にまで減少しています。となると株主総会で拒否権を発動できなくなり、『三木谷下ろし』が始まってもおかしくないとしていますが、確かに他事業が絶好調なのに『いつまでこんなことを続けているんだ』というのが多くの既存株主の思いでしょうから、堀江氏が言うのも納得できます」(同)

 蟻の一穴は空いたら終わり。楽天とモバイル事業の先行きがますます見えなくなっている。

(猫間滋)

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